3月1日妥当レンジ 11,300円~13,050円
引き続き“押し目”は強気のスタンスで
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<イタリア総選挙の影響も一時的に終わった>
■先週、24日~25日のイタリア総選挙においてベルルスコーニ前首相の中道右派が健闘したことによって世界的に株価は下落したが、日経平均株価は週末にかけて値を戻し、昨日(3/4)は年初来高値を更新した。米国では大統領令によって850億ドルの歳出削減が発動されたものの市場は冷静を保っている。この背景としては、世界的に経済指標が堅調なことにある。米消費者信頼感指数(2/26発表)、米ISM製造業景況指数(3/1発表)も堅調に推移している他、国内の経済指標も回復を示すものとなっていることが挙げられる。
■昨年11月以降の円安・株高は、欧州金融危機が一服したことによる投資家のリスク許容度が回復したことによる。これは決してアベノミクスによる金融緩和期待だけで生じたものではない。ただし、行過ぎた円高が終焉し、円安に振れたことによって企業業績の回復期待が増しており、これが持続的な株価の上昇を齎している。ファンダメンタル企業業績はコンセンサス予想を見る限りは回復を続けており、現在の株価には割高感はない。上昇ピッチが速いことから調整局面は今後も度々発生すると考えるが、押し目買いのスタンスで臨みたい。
<物色範囲は広いが高収益銘柄を軸に>
■3月1日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、来期・再来期のコンセンサス予想EPSが引き続きプラスであった。前週比プラスとなった企業数の比率は今回は上昇しており、プラスが50%以上の状態がまだまだ続きそうである。
■前回のレポートで大型株の方に優位性があると述べたが、物色範囲は広く、中小型株の好業績株にも注目しておきたい。その際のベンチマークとしては予想ROEを用いたい。日経平均の予想ROE(来期ベース)の直近予想値が7.86%にあることを鑑みれば、投資対象銘柄には少なくとも8.5%以上を求めたい。日経平均の妥当レンジは今週も若干上方に修正する。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
11,300円~13,050円 | (前回 11,000円~12,750円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月1日)
今期予想EPS | 565.43円 | (前週567.20円) |
来期予想EPS | 753.34円 | (前週751.61円) |
再来期予想EPS | 844.26円 | (前週842.07円) |
今期予想PER | 20.53倍 | (前週 20.07倍) |
来期予想PER | 15.41倍 | (前週 15.15倍) |
再来期予想PER | 13.75倍 | (前週 13.52倍) |
来期予想PBR | 1.21倍 | (前週1.19倍) |
来期予想ROE | 7.86% | (前週7.87%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.80% | (前週6.77%) |
*3月1日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
今回は予想ROEと、期待リターン(いずれも来期ベース)の長期推移を掲載する。予想ROEはリーマンショック以降は回復を続けたが、東日本大震災、タイ洪水、欧州金融危機などを経て昨年10月頃がボトムとなっている。
3/1現在は7.86%となり前年同時期(2012年の3/2が7.52%)を上回って推移している。
リーマンショック後に予想ROEが最も高かったのは、2011年5月の8.45%。対象決算期が変わる本年5月にはこれに近い水準まで回復することが見込まれる。
日経平均のBPS(一株純資産)は、リーマンショック後は急速に回復している。 予想ROEの改善が遅いのは(=日本企業のROEが低いのは)、企業が内部留保を高めることによって分母(純資産)が増加していることも大きな要因となっている。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |