11月4日妥当レンジ 27,519円~29,691円
目先は中間選挙での共和党勝利にポジティブに反応
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米国金利は上昇トレンドは持続しているが>
■FOMC(1-2日)後の記者会見において、パウエル議長は「(23年中に4.6%とした9月会合での金利見通しについて)最近のデータを踏まえれば、最終的な金利はより高くなる」と述べ、利上げ停止の議論に関しても「かなり時期尚早だ」と言及した。FRBの利上げペースの鈍化はあくまでも過去4回に及ぶ0.75%引き上げの効果を図ることが目的であり、ターミナルレート(最終到達金利)に関しては一段と引き上げられる見通しである。次回FOMC(12/13-14)においては0.5%と利上げペースを緩和することが有望視されるが、ドットチャート(政策金利見通し)においては23年末で5%超に引き上げられることが見込まれるだろう。
■4日発表の10月の米雇用統計においては、非農業部門雇用者数は前月比26.1万人増(9月分は26.3万人→31.5万人増に上方修正)と市場予想(20.5万人増)を上回った。一方で失業率は前月の3.5%から3.7%に上昇した。好悪混じる内容であったが、この結果を踏まえたうえで、サマーズ元米財務長官は、「政策金利を6%以上に引き上げる必要性が生じる恐れがある」と述べている。7日時点での米国債利回りは10年債で4.2%台、2年債で4.7%台と強含みに推移している。
■金利上昇懸念が存在するにもかかわらず、米国株は堅調に推移している。企業業績が事前の予想ほどは悪くはなかったということもあるが、米中間選挙での共和党勝利によって政策の軌道修正に期待が生じている可能性がある。当レポートでも米中間選挙が転換点になる可能性について指摘してきたが(10/18付・11/1付)、モルガン・スタンレーは7日付のレポートで、「共和党の全面勝利なら財政支出が凍結され財政赤字が縮小する可能性が高まる。米国債利回りは低下し、株式相場の上昇を支えるだろう」と述べている。
■日本株もこうした米国市場のトレンドに乗る可能性が考えられる。主力大型株を中心に28,000円台を回復し、29,000円台を覗う展開も考えられる。ただし、次回のFOMCでの政策金利見通しの引き上げが見込まれるだけに長期的な上昇トレンドにはまだ至らないと現時点では予想する。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
27,519~29,691円 | (前回27,542~29,712円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月4日)
今期予想EPS | 1845.14円 | (前週1848.43円) |
来期予想EPS | 1828.31円 | (前週1842.41円) |
再来期予想EPS | 1991.23円 | (前週1999.79円) |
今期予想PER | 14.74倍 | (前週14.66倍) |
来期予想PER | 14.88倍 | (前週14.71倍) |
再来期予想PER | 13.66倍 | (前週13.55倍) |
来期予想PBR | 1.09倍 | (前週1.08倍) |
来期予想ROE | 7.36% | (前週7.37%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.89% | (前週6.94) |
11月4日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
米国のターミナルレート(最終金利)に関する議論は今後も続くが、目先的には中間選挙での共和党勝利(の見通し)に対するポジティブな反応が上回ると予想。日経平均株価は28,000円台を奪還し、29,000円を覗う動きも。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 51.1%→53.9%→56.0%→43.5%→43.5%→47.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.4%→45.5%→54.0%→42.4%→45.5%→50.0%。
来期ベースで3週連続50%割れ。コンセンサス予想EPS(絶対値)での来期減益率は▲0.5%から▲2.0%に拡大。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |