10月7日妥当レンジ 27,595円~29,756円
来期減益の織り込みが始まる

2022/10/11

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<既にコンセンサス予想EPSは来期減益を示している>
■先週の米国株式市場は、週初めはISM製造業景況指数(3日:9月分)が予想外に低下したこと、雇用動態調査(4日:8月分)において非農業部門の求人件数が下方修正された7月分よりも111.7万件減少したことを受けて、金利引き締めへの警戒が後退し大幅な上昇となった。しかし、OPECプラスが11月に日量200万バレルの減産を行うと発表(5日)したこと、FRB高官のタカ派コメントが続いたこと、雇用統計(7日:9月分)において失業率が3.5%(8月3.7%)に低下したことや平均時給の伸び率が前年同月比5.0%と引き続き高い水準にあったことなどからFRBが強固な引き締めを続けるとの見方が強まり再び下げ基調に転じている。
■3連休明けの日本株はこうした米国市場の動静を遅れて反映している。ただし、入国制限の解除に関連した銘柄や中小型のグロース銘柄などは底堅く推移しているように見受けられる。
■今週は米生産者物価指数(12日)、米消費者物価指数(13日)、米小売売上高(14日)(いずれも9月分)の発表に注目が集まる。物価指数はいずれも前月より低下を市場は見込んでいるもののドラスティックな改善がない限りは金利や株価に与えるプラスの影響は限定されるだろう。
■8日にクリミアとロシアを繋ぐ橋が爆破されたことへの報復措置としてロシアは10日にウクライナ首都キーウをはじめ主要都市への大規模ミサイル攻撃を行った。ウクライナ/ロシア情勢は一段と緊迫感を強めており、食糧やエネルギー価格が再び高騰する可能性も考えられる。
■日本株は目先的には再び日経平均株価26,000円割れをうかがう展開も予想される。コンセンサス予想EPSでは既に3週前(9/16)から来期予想が今期予想を下回っている。米金融引き締めの織り込みが終焉を迎えたとしても、企業業績の減益織り込みが本格化すると考えられるだけに反騰は限定的と考える。
■そうした環境下ではマクロ経済の影響を受けない小型成長株に資金が集まる可能性が高い。現在、バリュエーション調整から株価が下押ししている成長株の買い場を探りたい。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

27,595~29,756円 (前回26,369円~28,458円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月7日)

今期予想EPS 1853.74 (前週1838.00円)
来期予想EPS 1845.06 (前週1829.08円)
再来期予想EPS 1933.51 (前週1974.98円)
今期予想PER 14.63 (前週14.11倍)
来期予想PER 14.70 (前週14.18倍)
再来期予想PER 13.60 (前週13.13倍)
来期予想PBR 1.09 (前週1.04倍)
来期予想ROE 7.44% 前週 7.32%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.98% (前週 6.98)

10月7日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

前週(9/30時点)は採用銘柄の入替によって日経平均株価のコンセンサス予想EPS(全期間)に対して約40円のマイナス影響があった。今回(10/7時点)も入替(採用:SMCHOYA、しずおかFG、除外:ユニチカ、OKI、マルハニチロ)による影響があり、全期間で約20円のプラス影響があった。したがって、数値上はプラスになっているが、実質的には今期▲4.5円、来期▲4.9円、再来期▲4.0円のマイナスである。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 60.149.752.6%→47.351.1%→53.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、59.1%→50.0%→49.054.2%→49.445.5
サンプル数が少ないが、下降トレンドが顕在化しつつあるように思える。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。