6月17日妥当レンジ 27,630円~29,754円
悪材料は一巡したか? ひとまずは反発局面へ

2022/06/21

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<NYダウ3万ドル割れ、日経平均26,000円割れ>
■先週は経済指標発表などで冴えないニュースが続いた。NYダウは週間で1,504ドル下落し3万ドルを割り込んだ。日経平均株価も1,861円安となり26,000円割れとなった。時系列で紹介する。14日:米生産者物価指数(5月)は前年同月比▲10.8%。ロシア国営ガスプロムが「ノルドストリーム」向け供給の40%減を発表。15日:中国小売売上高(5月・前年同月比)▲6.7%、不動産開発投資(1-5月・前年同期比)▲4.0%。米小売売上高(5月)前月から0.5%減少。FOMCにおいて0.75%の政策金利引き上げが決定された。16日:スイス国立銀行が政策金利を▲0.75%から▲0.25%に引き上げるサプライズ。英イングランド銀行が政策金利を0.25%引き上げ。米住宅着工件数(5月)が前月の改定値から▲14.4%の減少となった。
■FOMC(14-15日)での0.75%の利上げは直前の市場予測に織り込まれていたことからサプライズは無かったものの、参加者による22年末時点の政策金利予想は前回(3月時点)の1.9%から3.4%へと大きく引き上げられた。残り4回の会合でさらに1.75%の引き上げが必要である。今後は景気指標としてインフレ率だけでなく、雇用関連指標が重視されるものと考える。日銀は政策決定会合(16-17日)において現状維持を決定した。国内においては消費者物価指数がより注目を集めるものと考える(5月分は24日発表)。
■コロナ禍における超金融緩和によって上昇した株価はコロナ前の水準まで戻るとの見方も一部にはあるようだ。2019年末の日経平均株価は23,816円。ただし、この時点の予想EPSは今期ベース1,263円(⇒PER18.8倍)、来期ベース1,388円(⇒PER17.1倍)。先週末時点の予想EPSは今期1,755円、来期1,877円。PERを同水準に見積れば日経平均株価は32,000~33,000円と算出される。しかし、長期金利は日本は0.25%程度の上昇にとどまっているが、米国は1.4%程度上昇している。仮に米国金利上昇分(1.4%)をPERに織り込むならば日経平均株価は25,900~26,100円と算出される。つまり、現水準は(今後のさらなる米長期金利上昇の可能性や企業業績の下押し懸念を除外すれば)既にコロナ前に戻っていると言えるだろう。日経平均26,000円近辺の水準は拾い場と考える。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

27,630円~29,754円 (前回28,404円~30,615円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月17日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月17日)

今期予想EPS 1762.36 (前週1755.92円)
来期予想EPS 1886.39 (前週1877.98円)
再来期予想EPS 2033.91 (前週2021.87円)
今期予想PER 14.73 (前週15.85倍)
来期予想PER 13.76 (前週14.82倍)
再来期予想PER 12.77 (前週13.76倍)
来期予想PBR 1.08 (前週1.15倍)
来期予想ROE 7.83% 前週 7.73%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.40% (前週 7.12%)

6月17日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

欧州のウクライナへの支援疲れ(ゼレンスキー疲れ?)とロシアの優勢が色濃くなってゆく中で停戦交渉開始への可能性が見えてきたようにも思われる。仮に、コロナ禍での株価上昇は過剰流動性と捉えた場合でも19年末時点から企業業績(予想EPS)は増加している。(米国)金利上昇分をバリュエーションに加味しても日経平均株価26,000円前後の評価は妥当な水準の範囲にあると考える(=26,000円を割り込む水準は買い場と考える)。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 69.846.256.3%→56.6%→57.3%→53.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、63.447.660.854.5%→54.0%→53.0%。
今期ベースでは50%を下回っており、足元の環境から1Q時点での企業ガイダンス引き下げにはやや注意。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

このページのトップへ