5月27日妥当レンジ 28,196円~30,402円
米国株式市場の急反発もまだ混沌のボックス圏
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<ダウ工業株平均は6日連続上昇>
■5月16-20日週に8週連続の下落となったNYダウは20日から27日まで6日連続上昇した。この間の上げ幅は1,959ドルだった。20日にセントルイス連銀のブラード総裁が「インフレ期待が制御できれば23-24年に利下げできると」と発言。23日にはアトランティック連銀のボスティック総裁が「9月に利上げを一時停止するのが理に適う」と言及した。25日に公表された5月のFOMC(3-4日)議事録要旨において、大半の参加者が「今後2回の会合でも0.5%の利上げが適切になるだろう」と指摘。0.75%の利上げへの言及がなかったことからFRBの「タカ派」姿勢がさらに強まるとの懸念が大きく後退した。
■FRBの「タカ派」が後退したのは住宅販売など経済指標が景気後退を示唆する内容が多いことによる。今週は、31日:コンファレンスボード消費者信頼感指数、6月1日:ISM製造業指数、3日:ISM非製造業指数、米雇用統計と発表が続くが、仮に市場予測よりも弱い数字であったとしても(一時的に株価が下落しても)景気後退に対してFRBが「ハト派」姿勢を強めるとの解釈から大崩れすることはなさそうである。しかしながら、インフレの鎮静化が見えてこない限り、本格的に株価が上昇トレンドに入ることはなく、市場の揺らぎは続くと考える。
■31日発表の中国製造業PMI(国家統計局)は49.6と前月から2.2pt上昇したものの3カ月連続で50を下回った。4月の中国の住宅販売額は前年同月比▲47%と半減しており、不動産企業への信用不安に加えて地方財政への影響が懸念される。
■30日に欧州連合(EU)は、ロシア産石油の輸入を禁止することに合意した。直ちに3分の2の輸入が止まり、年内に90%になる。原油市場の高止まりが見込まれ、日本もマイナス影響が継続することが予想される。
■27日時点の日経平均株価のコンセンサスEPSは全期間で前週比マイナスとなった。ただし、コンセンサスDI(前週比プラス企業とマイナス企業の割合)は全期間で50上回った(=前週比プラスとなった企業数の方が多い)。まだ全体としての方向感が見えない。少なくとも1Q決算まではボックス圏(26,000~28,000円)の動きが続くと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
28,196円~30,402円 | (前回28,329円~30,532円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月27日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月27日)
今期予想EPS | 1784.22円 | (前週1787.34円) |
来期予想EPS | 1901.22円 | (前週1913.46円) |
再来期予想EPS | 2038.09円 | (前週2069.13円) |
今期予想PER | 15.01倍 | (前週14.96倍) |
来期予想PER | 14.09倍 | (前週13.97倍) |
再来期予想PER | 13.14倍 | (前週12.92倍) |
来期予想PBR | 1.11倍 | (前週1.11倍) |
来期予想ROE | 7.85% | (前週 7.91%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.36% | (前週 7.40%) |
5月27日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
米長期金利の低下、賃金上昇の鈍化などプラス材料もあるが、リスクプレミアムを大きく低下させるほどの要因にはならないと考えている。ウクライナ情勢ではロシアの優勢が目立ってきたようにも見える。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.2%→66.3%→52.4%→69.8%→46.2%→56.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、50.0%→65.6%→46.7%→63.4%→47.6%→60.8%。
商社・海運・損保・エネルギーなどがプラスとなる一方で、電機・機械・建設などは弱含み(マイナス)。まだ方向感が見えない状態。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |