5月20日妥当レンジ 28,329円~30,532円
中国との緊張拡大の可能性への注意も必要
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<バイデン大統領来日>
■バイデン大統領が来日。23日の首脳会談の後に「日米首脳共同声明」が発せられた。「自由で開かれた国際秩序の強化」として、ロシアによるウクライナ侵略への非難と制裁継続をはじめ、中国の軍備増強・威嚇的行動に対する牽制が込められた。また、バイデン大統領は、記者会見において台湾有事の際には米国が軍事的に関与することを明言した。また、バイデン氏は日米韓・インドなど13カ国を創設メンバーとする新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を表明、中国に対抗したサプライチェーン再構築やデジタル貿易の枠組みを目指す。
■本日開催されている日米豪印によるクアッドもまた中国に対する軍事的・経済的な対抗を企図したものであり、日本においてこうした政治的なイベントが行われることによって、「米中対立」から「中国包囲網」へと強化され、その最前線に日本が位置づけられたことを認識する必要があるだろう。今後の中国の反発・対抗など中期的な影響が懸念される。
■先週の米国市場は90年ぶりとなる8週連続の下げとなった。17日発表の4月の米小売売上高は前月比+0.9%(3月分も上方修正)と堅調であったが、小売大手(ウォルマート、ターゲット)の業績不振が下落の引き金となった。リセッションリスクへの警戒も強まっている。
■今週の米経済指標は、24日:マークイット製造業PMI(5月)、新築住宅販売件数(4月)、26日:1-3月期GDP改定値、27日:個人消費支出・所得・PCEデフレーター(4月)。25日に5月開催分のFOMC議事要旨が公表されるが、 6月および7月のFOMCに各0.5%の利上げは既定路線として織り込まれており、議事要旨から市場の見通しが大きく変わる可能性は低いと思われる。
■20日時点のコンセンサス予想EPS(特に来期ベース)は、商社・半導体などの寄与から前週比増加したものの、コンセンサスDI(前週比プラス企業とマイナス企業の割合)は50を下回った。原材料価格上昇の影響を受ける業種に影響が出ており、好悪まだら模様にある。日経平均株価の妥当レンジは若干上昇したが基本的なスタンス(向う半年程度は28,000円程度が上限)は変わらない。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
28,329円~30,532円 | (前回28,100円~30,300円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月20日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月20日)
今期予想EPS | 1787.34円 | (前週1787.50円) |
来期予想EPS | 1913.46円 | (前週1910.27円) |
再来期予想EPS | 2069.13円 | (前週2048.06円) |
今期予想PER | 14.96倍 | (前週14.78倍) |
来期予想PER | 13.97倍 | (前週13.83倍) |
再来期予想PER | 12.92倍 | (前週12.90倍) |
来期予想PBR | 1.11倍 | (前週1.10倍) |
来期予想ROE | 7.91% | (前週 7.92%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.40% | (前週 7.44%) |
5月20日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
「日米首脳共同宣言」における台湾有事における米国の軍事的関与の明言、米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」は中国を刺激しないだろうか?
来期予想ベースのプラス企業比率は、 48.8%→44.2%→66.3%→52.4%→69.8%→46.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.5%→50.0%→65.6%→46.7%→63.4%→47.6%。
決算一巡後、来期・再来期ともにプラス比率は50%割れとなった。ただし、日経平均株価のコンセンサス予想EPSはプラスとなっている。商社や半導体関連など好調業種と、原材料費上昇の影響を受ける消費財など明暗が分かれる展開となっているようだ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |