4月8日妥当レンジ 28,047円~30,288円
下押し圧力の強い地合いが続く
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<世界的に株価は軟調気味に推移>
■先週の株価はやや軟調に推移した。米利上げ加速ならびに量的引き締め(QT)の開始見込み、ロシア・ウクライナ情勢の深刻化、中国経済の減速懸念などが影を落としている。8日にロシアのラブロフ外相はウクライナ側からの停戦合意案を拒否する考えを示した。ルーブルは一時約44%の下落をみたが、下落前にほぼ戻している。経済制裁が十分に機能していない可能性が強く、西側諸国は一段と制裁を強める構えであるが、資本流出の影響がなくなれば経常収支が為替の大きな決定要素となるが、ロシアは経常黒字である。制裁は資源や食糧価格の高止まりを通じて新興国経済に跳ね返る。人権問題からウクライナへの武器供与を積極化する動きもあるが、戦線が拡大する可能性とともに、ロシアによる核使用の懸念も強まる。株式リスクプレミアムの高止まりが続きそうだ。
■JPモルガン・チェースのダイモンCEOが株主に向けた手紙の中で「(金融引き締めの)過程では多くの混乱を招き、市場も非常に不安定になるだろう」と警鐘を鳴らした(4日)。ブレイナードFRB理事は5日の講演で「(QTについて)5月にも急ピッチで始める」「(2017-19年当時よりも)かなり急速な圧縮を想定している」と発言。6日に公表されたFOMC議事要旨(3/15-16分)において、すべての参加者が「早ければ5月の次回会合で(QTの)プロセスを開始するのが適切だろう」と指摘し、月950億ドルを上限とした縮小に概ね合意。さらに、多くの参加者が0.5%の利上げを1回以上実施する可能性に言及した。セントルイス連銀のブラード総裁は7日に政策金利は理論値より3%低いとし、3.5%まで利上げする必要を示唆した。週間の新規失業保険申請件数(3/27-4/2分)は16.6万件と1968年11月以来の低水準となり、労働市場の逼迫が強まっている。
■米長期金利(10年国債利回り)は、昨日に2.83%にまで上昇した。ドル円も125円台半ばまで円安が進んでいる。IMFは6日に日本の22年のGDP成長率を前回(1月)の3.3%から2.4%へと大幅に下方修正した。企業業績見通しにはまだ顕著な兆候は見られないものの、楽観できる状況ではない。
■12日:消費者物価(3月)、14日:ECB理事会が注目イベント。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
28,047円~30,288円 | (前回28,398円~30,681円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月8日)
今期予想EPS | 1645.03円 | (前週1649.47円) |
来期予想EPS | 1820.82円 | (前週1816.62円) |
再来期予想EPS | 1912.45円 | (前週1905.72円) |
今期予想PER | 16.40倍 | (前週16.77倍) |
来期予想PER | 14.82倍 | (前週15.23倍) |
再来期予想PER | 14.11倍 | (前週14.52倍) |
来期予想PBR | 1.15倍 | (前週1.18倍) |
来期予想ROE | 7.75% | (前週 7.72%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.14% | (前週 7.08%) |
4月8日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
米利上げペース加速と5月にもQT(量的引き締め)開始が見込まれる中、米国債利回りの上昇と円安が進行。リスクプレミアムの上昇から(平時の)妥当レンジを下回る展開が続きそうだ。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 49.4%→47.3%→48.8%→44.0%→46.2%→51.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.8%→49.4%→54.0%→51.3%→47.6%→56.4%。
来期・再来期ベースともに50%台回復。プラス企業では銀行・商社が目立つ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |