10月29日妥当レンジ 28,915円~31,262円
与党勝利で急騰、今週は米国市場が焦点か

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<事前予想を上回る与党勝利に日本株上昇>
■米国株式市場は先週も前週と同様にテスラをはじめ企業決算が好調な中、ダウ工業株、ナスダック総合など主要指標は最高値を更新した。日本株は31日投開票の衆議院選挙を控えて与党の劣勢が予想される中、企業業績が悪くないまでも市場の期待に届かずぐずついた展開であった。
■しかし、衆院選において自民党が予想を上回る議席を確保し、安定多数となったことによって、週明け月曜日(1日)の日本株は日経平均が+754円と急騰した。
■好調な株式市場とは対照的に債券市場では各国の中央銀行の緩和スタンスの変化に神経質な展開が続いている。27日にカナダ銀行(中銀)は量的緩和政策を終了すると発表。保有残高を維持するための再投資分以外の国債の新規投資を止める。28日のECB(欧州中央銀行)理事会においては緊急買取制度の縮小等の変更はなかったが、ラガルド総裁は物価上昇圧力が強まる可能性も示唆しており、次回(12/16)理事会において政策変更が行われる可能性が強まっている。米FRB(連邦準備理事会)は2-3日に行われるFOMC(公開市場委員会)においてテーパリング(緩和縮小)を決定する見通しである。市場では国債や住宅ローン担保証券の買取額を毎月150億ドルずつ減らして8カ月で終了するとの予想が主流である。市場よりタカ派の判断が示されれば株式市場にも影響が及ぶ可能性もある。
■31日発表の中国製造業PMI(10月・国家統計局)は49.2と前月比▲0.4ptとなり2カ月連続で50を下回った(7カ月連続悪化)。1日発表の米ISM製造業景気指数(10月)は60.8と前月比▲0.3ptであったが市場予測(60.5)は上回った。3日に米ISM非製造業景気指数、5日に米雇用統計の発表が予定されている。注目は4日のOPECプラスの会合。クウェート、イラク、ナイジェリアなどの参加国は斬新的な減産縮小計画の堅持を主張しており、原油需給の急速な改善は見込みにくい。
■グローバルでの金利上昇圧力が徐々に高まりつつある中で、中国経済の減速も続いている。国内企業業績は堅調であるものの、市場の期待には届かない。与党勝利での沸騰も持続的な上昇トレンドには至らず、今週はFOMCを見据えて窓を埋める展開を予想する。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,915円~31,262 (前回28,833円~31,227円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月29日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月29日)

今期予想EPS 1686.30 (前週1685.81円)
来期予想EPS 1771.85 (前週1765.98円)
再来期予想EPS 1849.71 (前週1846.40円)
今期予想PER 17.13 (前週17.09倍)
来期予想PER 16.31 (前週16.31倍)
再来期予想PER 15.62 (前週15.60倍)
来期予想PBR 1.23 (前週1.23倍)
来期予想ROE 7.53% 前週 7.53%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.98% (前週 6.98%)

10月29日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

従前の新聞報道とは異なり、31日投開票の衆議院選挙は自民党は大きく議席を減らすことなく、単独過半数を維持した。その結果、月曜日の日本株は大きく跳ね上がった。一方、先週から本格化した7-9月期決算は好調な企業も多いものの、不振企業もそれなりにあり、コンセンサス予想は僅かなプラスにとどまっている。企業業績が伸び悩む中では、米国主要経済指標の発表とFOMCが予定されている今週は米国市場の動きに影響を受けそうだ。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.344.351.1%→46.052.5%→53.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.844.852.4%→44.460.758.3%。
サンプル数はまだ少ないものの、50%割れが続くほどの不振にはならない様子。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。