8月27日妥当レンジ 27,651円~28,599円
テーパリングは織り込まれた
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<アフガン情勢とハリケーンがリスク要因>
■27日のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演は、テーパリング(量的緩和の縮小)を年内に開始するのが妥当との判断を示した一方で、「テーパリングの時期やペースは利上げ時期を意識して決めるわけではない」と市場に予断を与えないよう利上げとは一線を画した。結果的に市場はハト派的に受け止め、米国株は反発し、米長期金利の上昇も見られなかった。
■今週末にかけて8月の米国主要統計の発表が予定されているが、余程強い内容でない限り、9月のFOMC(9/21-22)でのテーパリングの決定はないというのが市場の大勢である。11月のFOMC(11/2-3)で決定し、12月から実施というのがコンセンサスである。
■新型コロナのデルタ株のまん延によって、米国でも行動制限が一部で取られているが、27日に発表された7月の個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)は、総合指数で4.2%と6月(4.0%)から上昇した。米国経済に鈍化傾向はみられず、ワクチンのブースター接種(3回目)を早める方向で動いていることもポジティブに捉えられよう。
■今週は、米国主要統計が集中する。31日:コンファレンスボード消費者信頼感指数、9月1日:ADP雇用統計、ISM製造業景気指数、3日:ISM非製造業景気指数、米雇用統計。コンファレンスボード消費者信頼感指数は通常はそれほど大きく注目されるものではないが、13日に発表されたミシガン大学消費者態度指数が2011年以来の低水準であったことから注目されている。
■懸念材料があるとすれば、アフガニスタンからの米軍退避における失敗によって、バイデン政権の指導力低下が顕在化する可能性があることが挙げられる。引き続きテロ発生リスクが存在することに加えて、タリバンが公約を順守するかも定かではない。もう一つのリスクは29日にルイジアナ州に上陸した大型ハリケーン「アイダ」である。上陸を受けてメキシコ湾岸地域の石油施設は操業を停止した。ハリケーンによる直接的被害だけでなく、ガソリン価格などの高騰から一時的に米国民の心理が悪化する可能性も考えられる。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
27,651円~28,599円 | (前回27,108円~29,335円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月27日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月27日)
今期予想EPS | 1743.23円 | (前週1731.69円) |
来期予想EPS | 1785.19円 | (前週1774.64円) |
再来期予想EPS | 1863.69円 | (前週1858.22円) |
今期予想PER | 15.86倍 | (前週15.60倍) |
来期予想PER | 15.48倍 | (前週15.22倍) |
再来期予想PER | 14.83倍 | (前週14.54倍) |
来期予想PBR | 1.12倍 | (前週1.10倍) |
来期予想ROE | 7.26% | (前週 7.20%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.97% | (前週 6.99%) |
8月27日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
日経平均株価は妥当レンジの下限近辺にあり、ダウンサイドに対してはサポートが十分に働く水準と思われる。国内の消費マインドがどれだけ回復するかには疑問が残るが、グローバルでのコロナ鎮静化から製造業の予想利益改善が続くと思われる。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 58.6%→47.4%→62.0%→61.5%→64.2%→61.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.7%→43.6%→57.8%→62.7%→63.2%→62.2%。
依然として高いプラス比率を継続。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |