7月9日妥当レンジ 25,400円~27,500円
NY市場活況を受け急回復も、感染拡大懸念が重石か?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<一時的にセンチメント悪化も米国株は最高値更新続く>
■先週の米株式市場は、一時的に大きく下げる局面もあったものの、結果的には主要指数が過去最高値を更新した(週明け月曜も最高値更新)。一時的に軟化した要因としては、1)OPECプラスが5日の閣僚会議を中止し、原油の減産縮小が見送られたことから資源価格上昇への懸念が強まったこと、2)6日に中国政府が中国企業の海外上場に対して規制を強化する方針を示したこと、3)米債務上限の停止処置の期限が7月31日に迫っていること、4)中国が預金準備率の引下げを検討していることを発表し、中国経済への懸念が強まったこと、5)米国の住宅ローン申請件数(週間)の急減や、新規失業保険申請件数(週間)が予想を上回り米経済回復ペースに懸念が強まったこと、6)東京オリンピックが無観客開催になるとの発表を受けて感染への懸念が再燃した、などが上げられる。米経済への懸念などから8日に米10年国債利回りは一時1.25%にまで低下した。
■日本株市場はこうした米国等の動きに加え、東京都に4度目の緊急事態宣言の発令、4府県にまん延防止等重点措置が適用されたこと(いずれも8月22日まで)から海外よりも深い溝となった。週明け急回復しているが米国市場には大きく遅れを取っている。
■今週発表の経済指標では、米消費者物価指数(13日)、米鉱工業生産(15日)、中国4-6月期GDP・小売売上高・鉱工業生産(15日)、米小売売上高(16日)などが注目される。なお、国内では15-16日に日銀金融政策決定会合が予定されているが、特に政策変更は見込まれてはいない。

<押し目買いのスタンス継続>
■東京オリンピックの開催(23日から)まで10日に迫った。感染拡大防止への取り組みが強化されるなかで、諦念が覆っている。日本株は海外市場のブレが増幅する形で下押し懸念があるが、ファンダメンタル(企業業績)からみて、ダウンサイドリスクは小さい。毎回同じコメントになるが、下げ局面では積極的に押し目買いで臨みたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

25,400円~27,500 (前回25,800円~27,900円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月9日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月9日)

今期予想EPS 1561.71 (前週1562.61円)
来期予想EPS 1671.50 (前週1671.09円)
再来期予想EPS 1778.78 (前週1777.99円)
今期予想PER 17.89 (前週18.42倍)
来期予想PER 16.72 (前週17.22倍)
再来期予想PER 15.71 (前週16.19倍)
来期予想PBR 1.16 (前週1.19倍)
来期予想ROE 6.93% 前週 6.89%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.59% (前週 6.48%)

7月9日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 


ファンダメンタル(企業業績)と株価の乖離はほぼ無くなった。



来期予想ベースのプラス企業比率は、 52.1%→55.0%→60.656.5%→51.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.2%→47.659.8%→51.4%→45.1
再来期ベースの弱含みが気になる。サンプル数が少ない時期でもあるので3月期決算の1Q発表まではトレンド変換とはまだ位置づけられない。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。