6月25日妥当レンジ 25,900円~28,000円
日経平均株価の妥当レンジは切りあがっている
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<パエウル議長の議会証言などから「利上げ懸念」は沈静化>
■先週(6/21-25)の日経平均株価は、前の週のNY市場の下落を受けて、週明けは大幅下落で始まったものの、NY市場の切り返しを受けて急回復した。週末比較では+102円であった。
■NY市場の下落はタカ派のFRB高官の発言から「利上げ前倒し懸念」が広がったものであったが、22日のパウエル議長の議会証言などFRBハト派による火消しが奏功したことや、バイデン大統領が24日に1兆ドル規模のインフラ投資法案で超党派議員と合意したことを表明したことを受けて、株価は上昇した。NASDAQ総合指数は史上最高値の更新を続け、NYダウも最高値に迫る展開にある。
■今週は、米国の主要経済指標の発表が相次ぐ。29日:コンファレンスボード消費者信頼感指数、30日:ADP雇用統計、1日:ISM製造業景気指数、2日:米雇用統計(すべて6月分)。特に、週末発表の米雇用統計では失業率、非農業部門雇用者数の改善が見込まれている。非農業部門雇用者数の市場予測は66.5万人増(5月:55.9万人増)であるが、予測を大きく上回った場合は「利上げ前倒し懸念」が再燃する可能性には注意したい。
<国内の経済回復は緩慢であるが>
■経済回復が顕著な欧米に比べて、“まん延防止対策”が続く国内の回復感は緩慢である。7月1日発表の日銀短観では製造業・非製造業ともに景況判断DIの上昇が見込まれてはいるが大きくは無い。2月決算期企業の1Q決算が始まっているが、3-5月は緊急事態宣言の影響もあり、あまり参考にはならないように思われる。オリンピックまで1カ月を切っており、感染拡大への懸念が強く意識される可能性もあるだけに、上値の重い商状が続くことも考えられる。
■ただし、コンセンサス予想EPSは欧米のコロナ禍からの脱却を視野に足もとよりも長期(再来期)でのプラス傾向が見て取れる。日経平均株価の妥当レンジは切りあがっており、米国の金融緩和継続によって押し上げられていた株価との乖離も大きく縮まっている。一時的な下ブレがあったとしても6月21日の28,010円がボトムラインになると考える。引き続き、押し目は強気で臨みたい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
25,900円~28,000円 | (前回25,200円~27,300円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月25日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月25日)
今期予想EPS | 1559.78円 | (前週1544.51円) |
来期予想EPS | 1670.19円 | (前週1665.03円) |
再来期予想EPS | 1777.63円 | (前週1753.62円) |
今期予想PER | 18.63倍 | (前週18.75倍) |
来期予想PER | 17.40倍 | (前週17.40倍) |
再来期予想PER | 16.35倍 | (前週16.52倍) |
来期予想PBR | 1.20倍 | (前週1.18倍) |
来期予想ROE | 6.88% | (前週 6.78%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.45% | (前週 6.37%) |
6月25日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
日経平均株価は妥当レンジを長らく上回り続けたが、レンジ基準( ERP=エクイティ・リスク・プレミアム6.5~7.0%)を頑なに維持した。金融政策が正常化に向かうにつれて、妥当レンジ内に日経平均株価も納まってくると考えている。株価が下落するのか? コンセンサス予想EPSがプラスに動くのか?いずれにしても、金融正常化による株価下落は限定的と考えている。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 48.9%→56.1%→52.1%→55.0%→60.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.0%→61.7%→51.2%→47.6%→59.8%。
全企業ベースでは1Q決算前に上方修正がやや目立ってきた。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |