6月18日妥当レンジ 25,200円~27,300円
TOPIXは既に先週末の水準を上回る、反騰から上昇へ
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<金融緩和の“歪み?”から短期と長期が乖離>
■先週(6/14-18)の日経平均株価は、上げ下げはあったものの週間では前の週からの変動は極僅かであった。しかし、米FOMC(15-16日)での2023年に2回の利上げを示唆する見通しや、18日のセントルイス連銀のブラード総裁の「22年後半にも利上げをするだろう」とのタカ派発言から18日のNYダウは533ドルの下落(前日比▲1.57%)。それを受けた週明け(21日)の日経平均株価は終値では前週末比953円(▲3.29%)の下落となった。
■ただし、奇妙なのは利上げが示唆されているにもかかわらず、米長期金利(10年国債利回り)が1.44%と逆に低下したことである。これについては、「短期的な米国債の発行減」、「日本などゼロ(またはマイナス)利回りの先進国の投資家の米国債買い」、「金融引締めが長期的な経済成長を鈍化させる」など見方が乱立している。また、16日にFRBがマイナス金利に陥りそうなMMF救済のためにリバースレポ金利を引き上げたことで短期金融市場のリスクが認識されたとも考えられそうだ。いずれにしろ、米長期金利の低下が一時的な状態であるのか否か、その要因が何であるのかについて共通認識が得られるまではややボラタイルな展開が続きそうである。
■15日発表の5月の米小売売上高は前月比▲1.3%と市場予想(▲0.8%)を下回った。しかし、3・4月分が合計で1.5%上方修正されており、実質的には+0.2%と強い内容。5月の米鉱工業生産も前月比+0.8%と4月の+0.1%から加速している。半導体不足や人材不足など供給制約から一時的には鈍化する可能性もあるが、コロナ禍からの脱却によって米国経済の拡大は持続するものと見られる。
■日本株は、21日は日経平均は大幅な下落に見舞われたものの、商品投資顧問(CTA)など仕掛け的な売り物が多かったのであろう。日経平均株価の下落率▲3.29%に対してTOPIXは▲2.42%に留まった。また、本日のTOPIXの上昇率は日経平均を上回り、既に先週末の水準を上回っている。一旦、下落見ることによって下値不安が解消し、米長期金利上昇懸念の織り込みも進んだことによって、ここからは上昇トレンドに向かいそうだ。3万円を目指す展開に移ると考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
25,200円~27,300円 | (前回25,500円~27,700円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月18日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月18日)
今期予想EPS | 1544.51円 | (前週1551.12円) |
来期予想EPS | 1665.03円 | (前週1676.30円) |
再来期予想EPS | 1753.62円 | (前週1761.43円) |
今期予想PER | 18.75倍 | (前週18.66倍) |
来期予想PER | 17.40倍 | (前週17.27倍) |
再来期予想PER | 16.52倍 | (前週16.43倍) |
来期予想PBR | 1.18倍 | (前週1.19倍) |
来期予想ROE | 6.78% | (前週 6.88%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.37% | (前週 6.48%) |
6月18日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジに向かって適正化が図られる過程であり、谷はそれほど深くは無いと考える。今回から参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%の日経平均株価)の記載は省略する
来期予想ベースのプラス企業比率は、 65.2%→48.9%→56.1%→52.1%→55.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、60.2%→53.0%→61.7%→51.2%→47.6%。
再来期ベースでプラス比率は50%割れ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |