6月4日妥当レンジ 25,500円~27,600円
米長期金利の上昇観測を織り込みつつ、値固め進む
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<株価は米長期金利の上昇予測を織り込みつつ値固め進む>
■先週(5/31-6/4)の日経平均株価は5/28日に大幅高となった反動から月曜日は下落しましたが、週末の米雇用統計を視野に小動きの展開であった。
■6月4日時点の日経平均株価のコンセンサス予想EPSは、今期・来期ベースにおいて前週比マイナスとなった。これは前回と同様に特定銘柄(ソフトバンクG)の影響が殆どである。それを除外すればプラストレンドは維持されており、コンセンサスDI(前週比プラスとなった企業の比率)は比較的高い水準に回復した。インプライド・リスクプレミアムを6.0%とした時の参考理論値は31,000円を超えており、米長期金利の上昇予測を或る程度織り込んだ水準感にあると言えよう。
<米雇用統計は市場予測を下回ったが>
■4日発表された米雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加は、4月分が若干上方修正(26.6→27.8万人増)され、5月は55.9万人増とほぼ倍増となった。しかしながら、市場予測(65万人増)を下回ったことや、時間当り賃金の伸び率が低下したことなどから、米長期金利は1.55%まで大きく低下した。市場では、6月のFOMC(15-16日)においてテーパリングが議題に上がったとしても、実施時期(市場は22年1-3月を想定)が前倒しされる可能性は低いという見方が支配的なようだ。
■今週は、10日(木)にECB理事会が予定されているほか、米消費者物価指数(5月)の発表が予定されている。4月分の発表(5/12)では年率4.2%の上昇となったことから株価の大幅下落の引金となった。5月は鈍化が予想されているが一応の警戒が必要であろう。
■国内でもワクチン接種が進んでいることもあり、新型コロナの感染がやや沈静化してきたことから消費関連への物色意欲が強まっている。しかしながら、原油や食料など国際商品市況が上昇していることや、構造的に円安トレンドが続くと考えられることから一時的な水準回復に留まるように思われる。まだ調整過程を終えたとは言いがたいものの、中期的には成長銘柄の押し目を拾ってゆきたいと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
25,500円~27,600円 | (前回25,200円~27,300円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月4日)
今期予想EPS | 1546.72円 | (前週1565.92円) |
来期予想EPS | 1678.20円 | (前週1683.22円) |
再来期予想EPS | 1765.74円 | (前週1754.25円) |
今期予想PER | 18.71倍 | (前週18.61倍) |
来期予想PER | 17.25倍 | (前週17.32倍) |
再来期予想PER | 16.39倍 | (前週16.62倍) |
来期予想PBR | 1.20倍 | (前週1.19倍) |
来期予想ROE | 6.94% | (前週 6.86%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.47% | (前週 6.42%) |
6月4日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジと現株価は接近してきたが、米長期金利の緩やかな上昇を織り込む過程にあると考える。
参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(6/4現在)は 31,350円(前週比+50円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は32,050円(前週比+350円)。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 59.5%→82.1%→65.2%→48.9%→56.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.6%→65.7%→60.2%→53.0%→61.7%。
前々週の停滞は一時的か?再びプラス比率は強含みに。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |