5月28日妥当レンジ 25,200円~27,300円
米雇用統計に注目。コロナ後の経済回復期待高まる

2021/06/01

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<コンセンサス予想のプラストレンドは打ち止めか?>
■5月28日時点の日経平均株価のコンセンサス予想EPSは、全期間(今期・来期・再来期)において前週比マイナスとなった。これは特定銘柄(ソフトバンクG)の影響が殆どではあるものの、それを考慮してもプラストレンドの鈍化が顕著である。本決算後のアナリストの予想修正がほぼ一巡した可能性があり、暫く(1カ月程度)は小幅な動きに留まると考える。
■米長期金利は1.6%台前半にあるものの、将来のテーパリングが意識されていることから、予想EPSのプラス進捗が無い限りは一進一退の上値の重い展開が続くと思われる。

<米雇用統計が上ブレするならば>
■先週発表になった米経済指標の多くは強含みの内容であった。ケースシラー住宅価格指数(25日発表:2月12.0%→3月13.3%)、週間新規失業保険申請件数(27日:47.8万件→40.6万件)、PCE[個人消費支出] コアデフレーター前年比(28日:3月1.9%→4月3.1%)。こうした強い指標が出ているにもかかわらず、米長期金利が低位安定しているのはインフレが一時的であるとのFRBによる見方が浸透していることが背景にある。しかし、より強い指標が続くようであればテーパリングの時期や幅に関する市場の見通しが修正される可能性もあるだろう。
■今週は、ISM製造業景気指数(1日)、ADP雇用統計・ISM非製造業景気指数・週間新規失業保険申請件数(3日)、米雇用統計(4日)と重要指標の発表が相次ぐ。4月分は非農業部門雇用者数がイレギュラー(市場予想を大きく下回る)となった雇用統計において予想(65万人増)を大きく上ブレするようであれば、15-16日のFOMCにおいてテーパリング議論が積極化されると市場が織り込むと考えられ、一時的に波乱要因になる可能性もあるだろう。
■中国、台湾、マレーシアなど東・東南アジアにおいて新型コロナの感染者が足もとでは増加しているが、インドの感染者数がイベルメクチン効果からピークアウトしており、欧米に加えてアフターコロナの経済回復を強く意識する展開となりそうだ。半導体の供給不安は残るが、自動車をはじめとした製造業にまだ追風が続くと考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

25,200円~27,300 (前回25,000円~27,100円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月28日)

今期予想EPS 1565.92 (前週1617.71円)
来期予想EPS 1683.22 (前週1724.27円)
再来期予想EPS 1754.25 (前週1773.31円)
今期予想PER 18.61 (前週17.50倍)
来期予想PER 17.32 (前週16.42倍)
再来期予想PER 16.62 (前週15.97倍)
来期予想PBR 1.19 (前週1.16倍)
来期予想ROE 6.86% 前週 7.04%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.42% (前週 6.65%)

5月28日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 


参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(5/28現在)は 31,300円(前週比▲200円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は31,700円(前週比+200円)。

 


来期予想ベースのプラス企業比率は、 68.859.5%→82.165.248.9
再来期予想ベースのプラス企業比率は、57.9%→51.6%→65.760.253.0%。
急減速。回復織り込みはひとまず終わったか?

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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