5月7日妥当レンジ 24,700円~26,700円
株価急落は来期以降の頭打ち感の台頭か?!

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<バリュエーションが切下がる可能性は?>
■11日の国内株式市場は、日経平均株価が900円超の大幅な下落となっている(午後2時現在)。前日のNY市場で米長期金利の上昇からハイテク株中心のNASDAQ指数が下落したことを受けたもののと説明されている。
■米国は経済再開が加速しており、それに伴って消費者物価の上昇が見込まれており、金利上昇も健全な経済回復を示すものと捉えられている側面が強いが、一方で日本国内は新型コロナの感染拡大から緊急事態宣言が延長され、オリンピックの開催に黄信号が点っている。ワクチン接種の遅れ、オリンピック開催の可否に対する政権の当事者能力の欠如、温暖化ガス30年までに46%削減に対する具体的な戦略の欠落、人権問題に対する不透明な態度、など国家としての信頼を失いつつある。
■国家としての戦略の欠如や発展に対する期待の剥落が企業業績の頭打ちとして認識されているようにも思われる。5月7日時点の日経平均株価のコンセンサス予想EPSは、今期(21年度)1582.38円、来期(22年度)1596.91円、再来期(23年度)1671.56円。今期(21年度)に関しては、3月26日時点(その時点では来期)の1475.91円を大幅に上回ったものの、来期(22年度)は3月22日時点の1598.87円とほぼ同等である。また、今期→来期のEPS増加率は僅か0.9%に留まる。まだ、決算発表は1週間残っているので何とも言えないが、日本に対する成長性に疑義が向けられている可能性があると言えよう。
■米FRBは6日に公表した金融安定性報告で「バリュエーションが全般に高い」と指摘し、投資家心理が悪化すれば急落につながる恐れもあるとした。次回のFOMC(6/15-16)においてはテーパリング(緩和縮小)が議題に上がる可能性が強まっており、日本株のバリュエーションも切り下がる可能性がある。その場合の、日経平均株価、(現株価との乖離が開く中でも妥当レンジとして維持してきた)左上に示した水準まで下落する可能性もあるだろう。
■まだ1週間残っている決算発表で少しでも予想EPSの上乗せを期待したい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

24,700円~26,700 (前回24,200円~26,200円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月7日)

今期予想EPS 1582.38 (前週1545.76円)
来期予想EPS 1596.91 (前週1583.00円)
再来期予想EPS 1671.56 (前週1655.09円)
今期予想PER 18.55 (前週18.64倍)
来期予想PER 18.38 (前週18.20倍)
再来期予想PER 17.56 (前週17.41倍)
来期予想PBR 1.23 (前週1.21倍)
来期予想ROE 6.70% 前週 6.66%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.22% (前週 6.22%)

5月7日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 


参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(5/7現在)は 29,900円(前週比+550円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は30,950円(前週比+650円)。

 


来期予想ベースのプラス企業比率は、 63.657.9%→60.668.859.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、61.759.0%→61.757.9%→51.6%。
今期(決算期移行前の来期)は、コンセンサスを上回って好調。 一方、来期(決算期移行前の再来期)、再来期(決算期移行前データ無し)はやや弱い印象。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]


米長期金利の上昇が無ければ、日経平均株価は妥当な水準。

 


今期予想ベースの大幅な増加に比較して、来期・再来期予想ベースの上乗せが小さい。決算発表一巡後は、上値の重い展開も考えられる。

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。