3月12日妥当レンジ 24,200円~26,100円
期待先行がやや強まっており、足元は反落に注意

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<NYダウ 7日続伸で最高値更新続く>

■昨日のNY市場はダウ平均が7日続伸し、4日連続で最高値を更新した。11日に成立した1.9兆ドルの経済対策ならびにワクチン接種の進展による経済回復への期待が底流にある。加えて、1)9日発表の経済協力開発機構(OECD)の世界経済見通しにおいて、21年の世界実質成長率が5.6%と1.4ポイント上方修正されたこと、2)10日発表の2月の米消費者物価が前月比+0.4%と市場予想に収まったこと、3)11日のECB理事会において国債等の買い入れに関して(総額は変えないが)購入ペースを速めることが表明されたこと、などが相場の押し上げに繋がったと考えられる。
■他方で米国長期金利は、15日に一時1.639%にまで上昇した。ただし、米インフレ連動債利回り(10年)は-0.69%と落ち着いており、実質金利は抑制されている。
■今週は、 17-18日に米FOMC、18-19日に日銀金融政策決定会合が予定されている。日米ともに大筋では政策変更は行われないと考えられるが、ECBが国債等の購入ペースの加速を打ち出したことから、FOMCにおいて金利抑制に向けた何らかの示唆を市場は期待している可能性もある。パウエル議長が従来の発言をただ繰り返すだけに留まるならば、大幅安となった4日の討論会の再現が生じるリスクもあるだろう。日銀は政策点検の結果が公表される予定である。上場投資信託(ETF)の購入や長短金利操作の運営方法の見直しが焦点となる。

<日本株においては新年度の企業業績の先取り続く>
■日経平均株価は、30,000円前後でもみ合う展開が続きそうだ。新年度の予想EPSは1500円余が見込まれることから、PER20倍が維持されるのであれば、30,000円は十分に合理的な水準である。しかし、金利上昇に伴いバリュエーションが抑制される懸念が残る以上は、上値を積極的には追い辛い。30,000円を大きく上回るような展開が生じた場合は、逆に決算発表で一旦売られる展開も考えられるだろう。ただし、再来期(新年度の来期)は10%以上のEPSの伸長が期待されるだけに、金利上昇の調整局面はむしろ買い場と考えている。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

24,200円~26,100 (前回23,600円~25,500円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月12日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月12日)

今期予想EPS 1325.02 (前週1311.36円)
来期予想EPS 1492.91 (前週1505.42円)
再来期予想EPS 1604.44 (前週1598.69円)
今期予想PER 22.43 (前週22.01倍)
来期予想PER 19.91 (前週19.17倍)
再来期予想PER 18.52 (前週18.05倍)
来期予想PBR 1.28 (前週1.23倍)
来期予想ROE 6.44% 前週 6.44%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.81% (前週 5.89%)

3月12日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

12ヵ月フォワード予想PERでは昨年6月にPER20倍に跳ね上がり、その後PER2023倍で推移している。米長期金利の上昇を受けて、一時的に20倍を割り込んだ(先週末は20.3倍)。新年度後の予想EPS1500円余が見込めるだけに、これ以上の金利上昇が無ければ日経平均株価 30,000円は割高とは言えない水準である。

 


新年度後は、来期→今期、再来期→来期、(データなし)→再来期、と移行する。
現時点での来期、再来期の水準から見て、全ての対象機関において2018年を上回る過去最高の業績予想数値が見込まれる。

 


参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(3/5現在)は 28,500円(前週比+800円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は30,150円(前週比+800円)。

 


来期予想ベースのプラス企業比率は、 61.964.075.260.459.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、59.2%→61.468.859.1%→63.7
コンセンサス予想は、増加傾向が続く。世界景気の回復を織り込む展開へ。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。