3月5日妥当レンジ 23,600円~25,500円
来週のFOMCを控えて方向感のない展開続く
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<上下動の激しい市場展開が続く>
■先週は週を通じて方向感の見えない、上下動の激しい相場展開だった。1日の商いの中でも大きな下落と上昇を繰り返した。
■4日の東京市場(日本株)は、パウエル議長の討論会を前に持ち高を減らす動きの中で大幅下落。同日のNY市場ではパウエル議長が「市場の混乱が起きれば不安材料になる」と長期金利に言及する一方で、具体的な抑制策を示さなかったことから長期金利は1.55%にまで上昇し、株価も大きく下落した。5日の東京市場は大幅安で始まったが、黒田日銀総裁が「長期金利の変動幅について必要と思っていない」との発言を受けて落ち着きを取り戻した。
■5日発表の2月の米雇用統計において、非農業部門雇用者数は前月比+37.9万人(1月+16.6万人、予想20万人)を大きく上回った。ただし、労働投入量が労働時間の減少により前月比▲0.5%と減少(1月は+0.7%)したことや、長期失業者(27週間以上)が414.8万人と前月比12.5万人増加した。NY株式市場においては、雇用統計発表直後は金利上昇懸念(一時的に米長期金利は1.62%に上昇)からハイテク株を中心に大きく売られたものの、雇用統計は質的に芳しい内容ではなかったことから売り一巡後は大幅に反発した。ただ、米上院は6日に1.9兆ドルの新型コロナウイルス対策法案を可決した(一部修正が行われたため下院で再審議を行い14日までに成立する見込み)。月内の支給開始をバイデン政権は計画しており、原油高による物価上昇もあり、金利の上昇懸念は強い。
■今週も出入りの激しい相場展開が継続すると考える。8日発表の景気ウォッチャー調査(2月)においては、現状判断指数が41.3(前月比+10.1)、先行き判断指数が51.3(同+11.4)と大きく改善した。今週は、目だった経済市場の発表は乏しいが、11日のECB理事会が注目される。ユーロ各国の金利も上昇傾向にある中で、資産購入プログラムの柔軟化(の可能性)など金利上昇への牽制が行われると予想される。
■来週は、17-18日に米FOMC、18-19日に日銀金融政策決定会合が予定されている。FOMCでの金利抑制策に注目が集まるだろう。米インフレ連動債(10年)は-0.65%と実質金利はまだマイナス圏にあることからインフレ懸念には程遠いと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
23,600円~25,500円 | (前回23,200円~25,000円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月5日)
今期予想EPS | 1311.36円 | (前週1267.29円) |
来期予想EPS | 1505.42円 | (前週1454.52円) |
再来期予想EPS | 1598.69円 | (前週1594.62円) |
今期予想PER | 22.01倍 | (前週22.86倍) |
来期予想PER | 19.17倍 | (前週19.91倍) |
再来期予想PER | 18.05倍 | (前週18.16倍) |
来期予想PBR | 1.23倍 | (前週1.22倍) |
来期予想ROE | 6.44% | (前週 6.12%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.89% | (前週 5.55%) |
3月5日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
12ヵ月フォワード予想PERでは昨年6月にPER20倍に跳ね上がり、その後PER20~23倍で推移してきたが、米長期金利の上昇を受けて、先週末は19.66倍と20倍を割った。ただ、新年度後の予想EPSは1500円余が見込めるだけに、これ以上の金利上昇が無ければ日経平均株価 30,000円は割高とは言えない水準である。
新年度後は、来期→今期、再来期→来期、(データなし)→再来期、と移行する。
現時点での来期、再来期の水準から見て、全ての対象機関において2018年を上回る過去最高の業績予想数値が見込まれる。
参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(3/5現在)は 27,700円(前週比+500円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は29,350円(前週比+650円)。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 64.3%→61.9%→64.0%→75.2%→60.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、64.3%→59.2%→61.4%→68.8%→59.1%。
高水準続く。弱気になる必要は無い。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |