1月29日妥当レンジ 21,900円~23,700円
妥当な調整局面、押し目は強気で!

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<ロビンフッドは切っ掛けであり高値警戒からの調整>
■27日、29日とNYダウは600ドルを超える下げ幅となり、29日の終値では30,000ドル割れとなった。これは株式投資アプリの米ロビンフッドが価格変動の大きな銘柄に対する取引制限を発動し、またそれを緩和したことによる混乱による。こうした混乱を生じたのは、高値警戒感が強まっていたことや、米国経済の回復ペースに対する懸念が生じていたことが背景にあるのだろう。
■日本株市場も米国市場の混乱を受けて、28・29日の両日併せて1000円近い日経平均株価の下げとなったが、週明けは企業の3Q決算の好調から回復傾向にある。1日朝にミャンマーでの軍部によるクーデターが伝えられたが、影響は極めて軽微であった。
■米国市場は依然として過熱感が残るだけに、今週の経済指標やバイデン大統領の大型景気対策の行方(共和党などの慎重論)によっては上下動の大きな展開も考えられる。1日発表の米ISM製造業景況指数(1月)は58.7と前月(60.5)から大きく低下した。3日発表のISM非製造業景況指数(1月)も低下が予想されている。他の指標の発表スケジュールは、3日:ADP雇用統計(1月)、4日:新規失業保険申請件数(1/30終了週)、5日:米雇用統計(1月)。雇用統計では前月に減少した非農業部門雇用者数の回復ペースが注目される。
■日本株も米国の影響を受ける可能性はあるものの、来期から再来期の企業業績を視野に置けば、(企業業績が株価に追いついてくることで)日経平均株価が27,000円を大きく割り込むような状況はあまり想定しなくて良いと考えている。昨年11月の米大統領選からの上昇ピッチが速過ぎたので、今回の調整はむしろ適切と思われる。

<妥当レンジは正常な状態を前提>
■米国のゼロ金利政策からリスクプレミアム(ERP)が縮小し、妥当レンジととの乖離が大きくなっているが、基準(ERPの設定)の変更は行わない。ただし、現状に合わせて補完的には示してゆきたい。再来期ベース(ERP=6.0%)の場合の理論値は27,150円である。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,900円~23,700 (前回22,300円~24,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月29日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月29日)

今期予想EPS 1098.36 (前週1093.13円)
来期予想EPS 1330.46 (前週1313.84円)
再来期予想EPS 1520.78 (前週1508.78円)
今期予想PER 25.19 (前週26.19倍)
来期予想PER 20.79 (前週21.79倍)
再来期予想PER 18.19 (前週18.98倍)
来期予想PBR 1.18 (前週1.22倍)
来期予想ROE 5.66% 前週 5.58%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.25% (前週 5.13%)

1月29日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(1/22現在)は 25,800円(前週比▲400円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は27,150円(前週比▲400円)。あと3ヵ月余で新年度になることを考慮すれば現株価水準はそれほど割高ではない。市場の下落があっても27,000円割れが下限と考える。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 58.1%→61.869.550.7%→62.4
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.871.867.454.2%→54.6
来期ベースは17週連続で50%超。3Qでの業績上方修正継続から押し目は底堅い動きに。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。