12月25日妥当レンジ 21,400円~23,100円
2つの懸念材料がなくなったが、上値の深追いは禁物
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<2つの懸念材料がなくなった>
■懸案事項であった米国の新型コロナウイルス対策法案ならびに英国・欧州連合の通商交渉が決着した。
■米上下両院は21日、9,000億ドルの新型コロナウイルス対策法案を可決したが、22日にトランプ大統領が現金給付の金額引上げを求めて署名を拒否することを表明していた。連邦政府予算案も合わせて法案化されていたことから政府機関が閉鎖となる可能性や、最悪の場合には廃案となる可能性もあったが、一転、27日夜にトランプ氏が署名した。これにより、失業給付の特例を再延長するほか、生活者1人当たり600ドルの現金支給、中小企業対策にも充てられる。
■今月末の期限が迫っていた英国と欧州連合の通商交渉は24日に合意し、関税ゼロの貿易が維持され、年明けからの混乱は回避された。
■こうしたリスク要因が回避されたことによって、株式市場は好反応を示している。新型コロナウイルス感染症において感染力の高い変異種が広がっているという懸念もあるが、感染者の増加率は11月20日頃をピークとして、足もとは鈍化傾向にあることも心理的にプラスに働いている可能性もある。ただし、世界的に入国制限など行動規制が強まっており、日本政府も全世界からの外国人の新規入国を28日から2021年1月末まで停止すると発表した。1月以降も欧米諸国や日本経済へのマイナス影響が強く残りそうだ。
■米国経済指標も、中古住宅販売件数、新築住宅販売件数ともに10月分が下方修正され、11月も前月を下回った。コンファレンスボード消費者信頼感指数も11月分が下方修正された上、12月も前月を大きく下回った。
<米上院ジョージア州決選投票など波乱要素は残る>
■31日から3日まで日本は正月休暇に入る。今年は例年より短く、2日・3日が土日であること(海外も休み)から海外市場の動きには過度に神経を尖らせる必要はないと考える。ただし、5日に米上院(ジョージア州)決選投票を控えていることや6日の(大統領選)選挙人投票の開票結果を控え、情報が錯綜するなどの懸念もあるので上値の深追いには気をつけたい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
21,400円~23,100円 | (前回21,500円~23,300円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月25日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月25日)
今期予想EPS | 1090.24円 | (前週1087.67円) |
来期予想EPS | 1306.90円 | (前週1305.74円) |
再来期予想EPS | 1494.64円 | (前週1492.39円) |
今期予想PER | 24.45倍 | (前週24.61倍) |
来期予想PER | 20.40倍 | (前週20.50倍) |
再来期予想PER | 17.83倍 | (前週17.93倍) |
来期予想PBR | 1.15倍 | (前週1.17倍) |
来期予想ROE | 5.63% | (前週 5.70%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.31% | (前週 5.34%) |
12月25日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(12/25現在)は 25,100円(前週比▲300円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は26,450円。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 58.7%→57.3%→57.6%→55.1%→56.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、63.4%→55.3%→61.9%→56.6%→64.4%。
8週連続で全期間50%超、来期ベースでは12週連続。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |