11月27日妥当レンジ 21,300円~23,000円
FOMCと選挙人による投票が新たな上昇の起点か

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<12月も新型コロナウイルスの感染拡大を懸念>
■11月の世界全体での新型コロナウイルルの感染者数は1,693万人(10月は1,192万人)、死者数は27.1万人(同18.1万人)と大幅に増加した(WHOを元にTIW算出)。感染者数の増大ペースは11月中旬をピークにやや鈍化傾向にあるが、12月も感染者ならびに死者の増加が予想される中で、欧米での経済停滞が懸念される。今週は、11月分の米ISM製造業景気指数(1日)、ISM非製造業指数(3日)、米雇用統計(4日)が発表されるが、前月を下回るか緩慢な改善にとどまることが予想されている。
■そうした中、11月25日に公開されたFOMCの議事要旨(11/4-5開催分)において、「資産購入の指針の強化」が議論されたことが明らかとなった。次回(12/15-16)のFOMCでは、「資産の購入ペースの増額」あるいは「購入国債の年限長期化」が採用される可能性が強いと見られている。また、14日は米大統領選における選挙人による投票日であり、次期大統領が正式に確定するという点でもリスクオンの起点となりそうだ。

<ESG関連への注目が加速>
■25日に、米国の持続可能性会計基準機構(SASB)と国際統合報告評議会(IIRC)は、新団体「バリュー・レポーティング財団」を設立して、2組織を統合する計画を明らかにした。現時点で、企業がESG開示基準に関する統一の基準なく、そのため規格が乱立する状況にあった。SASBとIIRCの統合によって、グローバル・スタンダードの確立に向かうことが期待され、ESG基準に基づく投資行動の拡大と、企業の環境適応が加速することが見込まれる。バイデン氏が掲げるパリ協定への復帰も再度注目されるだろう。
■筆者は、日本の技術優位性から水素関連技術・ビジネスに注目している。褐炭から低価格に水素を取り出し、CO2回収・貯蔵の事業化を進める川崎重工業(7012)、水素とトルエンを結合させたメチルシクロヘキサンによるタンカー輸送を可能にする千代田化工建設(6366)、アンモニアによるサプライチェーン構築を目指す三菱商事(8058)、水素ステーションを積極展開する豊田通商(8015)、岩谷産業(8088)、ENEOS HD(5020)などが挙げられる。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,300円~23,000 (前回21,000円~22,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月27日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月27日)

今期予想EPS 1074.57 (前週1048.54円)
来期予想EPS 1294.76 (前週1305.43円)
再来期予想EPS 1478.82 (前週1480.07円)
今期予想PER 24.80 (前週24.35倍)
来期予想PER 20.58 (前週19.55倍)
再来期予想PER 18.02 (前週17.25倍)
来期予想PBR 1.17 (前週1.14倍)
来期予想ROE 5.67% 前週 5.83%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.29% (前週 5.50%)

11月27日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(11/27現在)は 25,100円(前週比+400円)。 妥当レンジとの乖離はさらに広がっている。再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値も26,400円であり、加熱感が強まっているようにも見受けられる。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 51.4%→52.6%→58.0%→56.8%→58.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.551.9%→64.659.4%→63.4
4週連続で全期間50%超、来期ベースでは8週連続。今から思えば、8週前(10
月上旬から中旬)が市場の転換点だった。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。