8月28日妥当レンジ 19,500円~21,100円
米金融緩和の長期持続と国内景況感改善から一段高も!
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米国のゼロ金利長期継続はドル安リスクもある点に留意>
■先月27日、米連邦準備理事会(FRB)は同日予定されていたパウエル議長のジャクソンホール講演に先立って、政策指針の修正を発表した。金融政策の目標として「2%を上回るインフレ率を目指す」と明記し、一定期間の平均の物価上昇率が2%となるまでゼロ金利政策を維持することを示唆した。FOMCメンバーのインフレ予想は22年末でも1.7%であり、少なくとも23年までは緩和政策が続くと見込まれる。
■28日夕に安倍首相は記者会見を開き、健康上の理由から辞任を表明した。後任総裁(首相)は、両議員総会によって選出される見込みであり、菅官房長官が最有力である。菅氏はアベノミクスの継承を掲げており、首相交代で財政緊縮を警戒していたマーケットには安心感がある。
■31日発表の9月の中国製造業PMI(国家統計局)は51.0と前月(51.1)を若干下回ったが、1日の財新・マークイット発表では53.1と前月(52.8)から上昇し、9年半ぶりの水準となった。
■今週は、米国主要統計が、1日:ISM製造業景気指数、2日:ADP雇用統計、3日:ISM非製造業景気指数、4日:米雇用統計、と続く。8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数(8/25)が84.8と前月の改定値から6.9ポイント低下したことや、週間の失業保険申請件数の減少ペースが緩慢なことなどから雇用回復に停滞感があり、雇用統計の内容によってはNY市場は一時的に小幅な調整の可能性も考えられる。
■ただし、国内株式市場は、新型コロナウイルスの「指定感性症」見直しが示唆されること、「GO TO トラベル」キャンペーンの東京除外解除の可能性から景況感の改善が予想される。加えてバークシャー・ハザウェイの商社株取得を契機としたバリュー銘柄への再評価の可能性などポジティブ要因から株式市場は、強含みのスタンスを維持するものと考える。
■米金融緩和の長期維持によって株式のインプライド・リスク・プレミアム(ERP)の低下が維持される可能性が高まっている。今回から4頁の表「IFIS/TIWコンセンサス225 過去8週間の推移」に参考値としてERP6.0%の場合の日経平均株価の参考値を示した。28日時点の参考値は22,900円である。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,500円~21,100円 | (前回19,700円~21,300円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月28日)
今期予想EPS | 997.59円 | (前週993.13円) |
来期予想EPS | 1253.17円 | (前週1259.86円) |
再来期予想EPS | 1435.76円 | (前週1443.99円) |
今期予想PER | 22.94倍 | (前週23.08倍) |
来期予想PER | 18.26倍 | (前週18.19倍) |
再来期予想PER | 15.94倍 | (前週15.87倍) |
来期予想PBR | 1.06倍 | (前週1.06倍) |
来期予想ROE | 5.82% | (前週 5.84%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.61% | (前週 5.66%) |
8月28日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジと日経平均株価との乖離が解消される気配がない。FRBがゼロ金利を長期に亙って許容するフォワードガイダンスを出したことから、この差は暫くは埋まらないのだろう。市場のリスクプレミアム低下が続く可能性が大きい。次頁にリスクプレミアム6.0%で算出したチャートを参考までに掲載する。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.0%→44.8%→42.6%→43.3%→44.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.9%→48.2%→49.2%→47.2%→44.7%。
来期ベースは15週連続、再来期ベースも13週連続で50%割れ。回復(反転)ペースは依然として弱い。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
2019年の秋口からリスクプレミアムの縮小が見て取れる。新型コロナ・ショックで一旦は開いたものの、FRBの緩和策が発動された4月中頃から一段と縮小しているのが見て取れる。
ヒルトリカルなコンセンサス予想EPSの水準と日経平均株価の水準を比較すると再来期ベースを採ってみても株価水準には割安感は見られない。
米国のゼロ金利長期継続という異次元に突入したのか?それともバブルの始まりか?
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |