7月31日妥当レンジ 19,300円~20,900円
米中のPMI上昇を好感、引き続き労働指標には注意
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米国失業保険申請数は2週連続で増加>
■30日に発表された4-6月期の米国の実質GDP速報値は年率換算で前期比▲32.9%と大幅な落ち込みとなった。29日の米連邦公開準備委員会後の記者会見でパウエル議長は「6月後半から個人消費は減速している」と指摘した。
■7月30日に米労働省が発表した25日までの新規失業保険申請数は、143.4万件と前週比1.2万件増と2週連続の増加となった。5月上旬の2,491万人をピークに減少を続けてきた総受給者数も18日の週までの1,701.8万人と前週比86.7万人の増加となった。7月末で期限切れとなった失業給付の特別加算の延長もまだ決着がついていない。9月末には航空会社の雇用維持策も期限が切れる。雇用関係の統計発表は今後も米国株市場の下押し要因になりそうだ。
■しかし、一方で目先発表された7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は好調だ。7月31日発表の中国国家統計局分は、51.1と前月より0.2ポイント上昇。3日発表の財新・マークイット分も52.8(前月比+1.6ポイント)であった。同じく3日発表のISM製造業PMIは、54.2と6月の52.6から2ヵ月連続で大きく上昇した(市場予想は53.6)。株価上昇はこうした経済指標の好調を受けたものではあるが、ただし、米国は足もとでは新型コロナウイルス感染者・死者の拡大が止まらず、持続性と回復スピードには疑問が呈されている。
■今週はISM非製造業景気指数(5日:7月分)、新規失業保険申請件数(6日:8/1終了週)、中国貿易統計(7日:7月分)、米雇用統計(7日:7月分)の発表が注目される。足もとの経済活動の回復傾向と高止まりする失業率を見ながら楽観と悲観の間で交錯する展開が今後も続きそうだ。
<労働市場の問題は日本も同じ>
■7月31日に発表された6月の完全失業率は2.8%と前月比0.1ポイント改善した。しかしながら、6月の就労者数は1年前に比べて77万人減少しており、休業者も236万人と高止まりしている。雇用を維持するための雇用調整助成金の特例処置も9月末が期限となる。国内でも失業者の増加が懸念される。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,300円~20,900円 | (前回19,800円~21,300円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月31日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月31日)
今期予想EPS | 1012.23円 | (前週1007.04円) |
来期予想EPS | 1266.89円 | (前週1262.04円) |
再来期予想EPS | 1455.52円 | (前週1451.49円) |
今期予想PER | 21.45倍 | (前週22.59倍) |
来期予想PER | 17.14倍 | (前週18.03倍) |
再来期予想PER | 14.92倍 | (前週15.67倍) |
来期予想PBR | 1.00倍 | (前週1.05倍) |
来期予想ROE | 5.86% | (前週 5.84%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.84% | (前週 5.69%) |
7月31日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
企業業績はここまで発表された4-6月期決算を見る限り、従前予想より弱含み。一方で、足もとの経済指標の好転から市場は反転上昇傾向に。市場関係者の多くは、下値の目処をPBR 1.0倍(21,078円)と意識していることもあり、押し目には買いが入る状況。米国の「財政の崖」問題等、懸念材料が現実化しない限りこの状況は続きそうだ。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 41.9%→42.5%→36.8%→34.4%→45.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、45.5%→49.5%→41.8%→36.2%→48.9%。
来期ベースは11週連続、再来期ベースも9週連続で50%割れではあるが、底打ち感が表れつつあるように見受けられる。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |