7月10日妥当レンジ 19,500円~21,100円
中国、米国ともに雇用と個人消費に注目
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<中国の小売売上高と米国失業保険申請件数に注目>
■米国のハイテク株上昇の流れを受けて日本株市場も昨日は大幅高となったが、目立った材料も無く、やや方向感の乏しい商状が続いている。
■今週は、経済イベント、経済指標の発表が目白押しである。日銀金融政策決定会合(14-15日)、ECB理事会(16日)、米ベージュブックの発表(15日)、臨時欧州首脳会談(17-18日)、G20財務相・中銀総裁会議(18日)。指標発表は、中国貿易統計(14日)、中国4-6月GDP(16日)、中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(6月分・16日)、米国小売売上高(6月分・16日)、米国新規失業保険申請件数(7/11終了週・16日)、ミシガン大学消費者信頼感指数(7月速報値・17日)など。
■中国の4-6月期GDPはプラス転換すると見られている(1-3月期は▲6.8%)。しかし、輸出先国の経済回復が遅れていることや、雇用不安から個人消費が伸び悩んでおり、回復は予想以上に緩慢なものになる可能性が指摘されている。中国は逸早くコロナ禍から脱出しただけに、今後の各国の経済回復を占う意味において先行モデルと捉えられているだけに特に小売売上高(社会消費品小売総額)が注目される。
■米国では新型コロナの感染再拡大によって、失業者の減少が緩慢である。6月27日の週の失業保険の総受給者数は1806万人と高止まりしている。7月4日週(週間)の新規失業保険申請件数は131.4万人、11日週では125万人が見込まれている。失業給付の増額も7月末で期限が切れる見通してあり(追加策が検討されているが)、米個人消費も失速が懸念される。
■今週は、もう一つ、注目されるのが臨時欧州首脳会談である。欧州委員会は経済復興を目的に7,500億ユーロの基金創設案を提示しており、首脳会談の中心議題であるが、オランダなど倹約4カ国が反対しており、早期の妥結は微妙な情勢だ。
アナリストコンセンサス予想の下方トレンドは底打ちが近いと考えられるが、株価水準は企業収益(予想)からは割高である。ただし、PBR1.0倍の水準が切りあがっており、下値不安は大きくは無い。当面は米中の経済指標を見ながら方向を模索する展開が続きそうだ。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,500円~21,100円 | (前回19,700円~21,300円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月10日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月10日)
今期予想EPS | 1025.29円 | (前週1034.36円) |
来期予想EPS | 1275.66円 | (前週1280.78円) |
再来期予想EPS | 1458.10円 | (前週1464.88円) |
今期予想PER | 21.74倍 | (前週21.57倍) |
来期予想PER | 17.47倍 | (前週17.42倍) |
再来期予想PER | 15.29倍 | (前週15.23倍) |
来期予想PBR | 1.02倍 | (前週1.03倍) |
来期予想ROE | 5.86% | (前週 5.93%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.78% | (前週 5.82%) |
7月10日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
PBR1.0倍(21,229円)の水準が切り上がっており、下値サポートが強力。しかしながら、米国の新型コロナ再拡大と、それに伴う失業の高止まりなど懸念材料も少なくは無い。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 30.5%→29.2%→37.6%→41.9%→42.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、37.9%→42.7%→46.5%→45.5%→49.5%。
来期ベースは8週連続、再来期ベースも6週連続で50%割れであるが、再来期ベースでは50%が目前の水準にある。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |