6月26日妥当レンジ 19,900円~21,500円
米国の感染再拡大と経済指標良化の狭間の動き

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米国内の感染再拡大も政策的対応が市場を支える>
■米国においては、経済再開による経済指標の良化と、それとは対極的に新規感染者数の加に市場が揺れている。米南部のテキサス州とフロリダ州は26日に飲食店などの営業規制を再び強化すると発表した。米国では新型コロナウイルスの新規感染者数が18州で過去最多を記録した(28日までの1週間)。一方で、PMI製造業景気指数・サービス業景気指数(6月分・23日発表)、新築住宅販売件数(5月分・23日発表)、製造業受注(5月分・26日発表)など発表される指標はいずれも経済環境の良化を示している。25日発表の14-20日の新規失業保険申請件数は148万件と前週(154万件)からの改善ペースは緩やかであり、感染者数の再拡大の影響も鑑みれば今後経済回復は鈍化するとの見方もあるが、トレンド転換に至るほどではないだろう。
■国際通貨基金(IMF)は24日に、世界経済見通しを改定し、2020年の世界全体の成長率を4月時点の▲3.0%から▲4.9%に下方修正した。また、IMFは25日に、日米などの株価上昇は「実体経済と乖離しており、割高である」との報告書を公表した。この報告書の中で相場が下落に転じる要因として、1)感染症第2波の発生、2)中銀への過度な期待の反転、3)政治リスク、が挙げられている。
■株式市場には割高感があるものの金融相場の継続から強含みの展開という基本線は変わらない。今週発表のISM製造業景気指数(1日)、米雇用統計(2日)の改善に市場はポジティブに反応すると考えられる。
■本日(30日)、中国は全人代・常務委員会において、「香港国家安全維持法案」を可決した。既定路線であったことから市場の動揺は無いものの、米国を始めとした国際社会の制裁も含めた反発には注視する必要があるだろう。

<「コンセンサスDI」は50%割れ続くが下方トレンドは鈍化>
■「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は来期ベースで6週連続、再来期ベースで4週連続で50%割れが続く。徐々にマイナストレンドには底打ち感が出てきているものの、まだプラス転換には時間を要すると思われる。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,900円~21,500 (前回19,900円~21,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月26日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月26日)

今期予想EPS 1030.31 (前週1045.43円)
来期予想EPS 1286.76 (前週1296.03円)
再来期予想EPS 1465.49 (前週1464.25円)
今期予想PER 21.85 (前週21.50倍)
来期予想PER 17.50 (前週17.34倍)
再来期予想PER 15.36 (前週15.35倍)
来期予想PBR 1.05 (前週1.06倍)
来期予想ROE 6.01% 前週 6.11%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.88% (前週 5.96%)

6月26日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

割高感は薄らぎつつあるが、コンセンサス予想EPSはまだダウントレンドにあり、上値の重い展開。しかし、PBR1.0倍(20,845円)を割り込む局面も予想しづらい。
上下動の振れが小さくなった後に次の展開か!?

来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.531.030.529.237.6
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.0%→41.537.942.746.5
来期ベースは6週連続、再来期ベースも4週連続で50%割れであるが、やや水準が上がってきた。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。