6月19日妥当レンジ 19,900円~21,500円
経済指標は回復傾向でも地政学リスクが台頭
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米経済指標は概ね良好な回復トレンド>
■この1週間に発表された米国経済指標は良好な内容が多い。小売売上高(5月分・16日発表)は前月比+17.7%と市場予測(+7.7%)を大きく上回った。鉱工業生産指数(5月・16日)は3ヵ月ぶりの上昇。住宅市場指数(6月・16日)は2ヵ月連続で上昇し、58と節目の50を上回った。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数(6月・18日)は前月の▲43.1から+27.5へと大幅に改善した。ただし、失業保険の新規申請件数(18日発表)は、13日までの1週間で150.8万件となり前週(156万件)から僅かな回復に留まった。6日の週の受給者総数も2,054万人と前週比横這いで、雇用回復は緩慢な状況が見て取れる。
■米連邦準備理事会(FRB)は15日に、一般企業に直接融資する「メインストリート融資制度(MSLP)」を開始した。米企業のローン残高の約15%に相当する6,000億ドルの資金枠を用意した。こうした資金供給の拡大が雇用維持や企業の資金繰り確保を越えて、投資資金として循環しており、株式市場だけでなく、商品市場にも波及しつつある。原油や非鉄金属などの国際商品価格は3ヵ月ぶりの高値を記録している。新型コロナ第2波が懸念されているが、危機が高まればさらなる財政出動への期待が高まるという構造にある。パウエルFRB議長は、16日の米上院委員会で「米国は基準通貨国で、大いに国債発行能力がある。財政悪化を懸念するのではなく、今は歳出増で経済再生を優先すべきだ」と発言した。
■株式市場には割高感があるものの金融相場の継続から強含みの展開というのが基本線であろう。ただし、こうした状況に水を差すとすれば地政学リスクであろう。北朝鮮は16日、南北共同連絡事務所を爆破した。同じく16日にはインド北部のラダック地方においてインド軍と中国軍の衝突から死傷者が発生した。日米欧の主要7カ国が「重大な懸念」と共同声明を発表した「香港国家安全法案」は、28-30日の中国全人代常務理事会において可決される可能性が強まっている。
■11月の米大統領選挙におけるトランプ大統領の劣勢が強まる中、強硬策が発動されるリスクも留意が必要であろう。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,900円~21,500円 | (前回19,800円~21,400円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月19日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月19日)
今期予想EPS | 1045.43円 | (前週1082.30円) |
来期予想EPS | 1296.03円 | (前週1318.04円) |
再来期予想EPS | 1464.25円 | (前週1472.82円) |
今期予想PER | 21.50倍 | (前週20.61倍) |
来期予想PER | 17.34倍 | (前週16.92倍) |
再来期予想PER | 15.35倍 | (前週15.14倍) |
来期予想PBR | 1.06倍 | (前週1.05倍) |
来期予想ROE | 6.11% | (前週 6.18%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.96% | (前週 6.07%) |
6月19日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
割高感は一時よりは薄らいではいるものの、コンセンサス予想EPSはダウントレンドにあり、上値を探る展開は期待しづらいと考える。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 35.2%→45.5%→31.0%→30.5%→29.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.0%→54.0%→41.5%→37.9%→42.7%。
来期ベースは5週連続、再来期ベースも3週連続で50%割れ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |