6月12日妥当レンジ 19,800円~21,400円
乱高下はあっても強含み基調は変わらず
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<民主党の副大統領候補は黒人女性?>
■先週のNY市場は、10日にナスダック総合指数が終値で10020.346と史上最高値をつけたが、11日には大幅な下落となった。新型コロナウイルス感染の再拡大やFOMCにおいて景気回復に時間がかかるという見方が前日に示されたことが下落理由と説明されていたが、単純に高値警戒感からの売りと考えられよう。
■10日のFOMCでは、参加者17人中15人が2022年末までゼロ金利を見込み、20年10-12月時点の失業率を9.3%、その1年後も6.5%と予測し、雇用の回復には時間がかかるとの見解を示した。その上で、「フォワード・ガイダンス」ならびに「イールドカーブ・コントロール」も検討するという内容であった。
■基本的には、流動性の供給ならびにゼロ金利が長期に亙って継続される。したがって、債券よりも株式の投資選好は継続され、過熱感のある水準が維持される可能性が高いと考える。また、財政出動による各国政府の財務の悪化は、通貨価値の毀損に繋がることから、金(ゴールド)を押し上げる要因として働いている。これは株式価値の相対的な上昇にも繋がっていると考えられる。景気の本格回復時にはインフレ圧力を齎す可能性があるが、まだ当分先のものと考えられるだろう。
■新型コロナウイルスの感染は中南米・インドなど拡大が続く。13日には1日の新規感染者数が14万人超と過去最高を更新した。ただし、1日の死者数は3千~4千人の範囲に留まっており(過去最高は4月30日の9,796人)、死亡率は低下傾向にある。
■8日に米CNNがまとめた11月の大統領選の世論調査において、バイデン氏の支持率が55%となり、41%のトランプ大統領を大きく上回った。そうした中で民主党の副大統領候補として4人の黒人女性に候補が絞られている模様である。社会主義政策の色濃いエリザベス・ウォーレン議員が選ばれる可能性が後退したことも株式市場にポジティブに働いているようだ。
■今週は16日のパウエルFRB議長の議会証言(上院)が注目される。経済指標では、5月の米小売売上高・鉱工業生産指数(16日)で回復が予想されているが、仮にコンセンサスを下回ったとしても株価への影響は限定されると考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,800円~21,400円 | (前回20,200円~21,800円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月12日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月12日)
今期予想EPS | 1082.30円 | (前週1085.94円) |
来期予想EPS | 1318.04円 | (前週1325.80円) |
再来期予想EPS | 1472.82円 | (前週1480.75円) |
今期予想PER | 20.61倍 | (前週21.05倍) |
来期予想PER | 16.92倍 | (前週17.25倍) |
再来期予想PER | 15.14倍 | (前週15.44倍) |
来期予想PBR | 1.05倍 | (前週1.07倍) |
来期予想ROE | 6.18% | (前週 6.23%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.07% | (前週 6.03%) |
6月12日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
6月12日時点の今期コンセンサス予想PER 20.61倍、来期 16.92倍、再来期15.14倍。15日の日経平均終値21,530.95円は、12日時点の妥当レンジ(19,800~21,400円)をやや上回る水準であるが、割高感は解消されつつある。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 55.3%→35.2%→45.5%→31.0%→30.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.1%→47.0%→54.0%→41.5%→37.9%。
来期ベースは4週連続、再来期ベースも2週連続50%割れ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |