5月15日妥当レンジ 17,900円~19,300円
ワクチン開発に沸くも一時的か?米中関係に波乱の動き

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<4-6月の国内GDP見通しは前期比年率▲21.2%の見通し>
■18日のNY市場ではダウ工業株30種平均は911.95ドル上昇(+3.85%)し、24,597.37ドルとなった。同日に米バイオ企業のモデルナが新型コロナウイルスのワクチン開発において、初期の臨床試験で有望な結果が出たと公表したことによる。
■同社が実施した第1段階の臨床試験では45人の被験者にワクチンを投与し、8人に中和抗体(ウイルス感染阻止能を有する抗体)が見られたとのこと。同社は7月から大規模な臨床試験を開始し、早ければ来年1月にも実用化できるとの見通しを述べた。ただし、第三者の査読は受けておらず、医学誌にも発表されていない。過度な織り込みには注意が必要と思われる。
■新型コロナウイルスの新規感染者数は、ロシアや南米など新興国を除けば減少傾向にあり、欧米では移動制限の緩和や店舗再開への動きが進みつつある。国内でも14日に39県で緊急事態宣言が解除された。心理的な改善が株価を押し上げる要因になっていることには違いないが、しかしながら、経済の回復にはまだ時間を要すると思われる。
■18日に発表された日本の1-3月期のGDP伸び率は前期比年率換算で▲3.4%の減少であった。民間エコノミストの4-6月期の見通しは▲21.2%であり、7-9月期は+7.5%と回復傾向に向かうが緩慢なものに留まる模様である。
■こうした中で、米国は中国への牽制・圧力を強めている。連邦退職貯蓄投資理事会は中国株への投資を延期すると発表(13日)、米上院はウイグル人権法案を可決(14日)、米商務省は華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸を強化(15日)。米商務省の発表を受けて台湾TSMCはファーウェイからの新規受注を止めた(18日)。また、米NASDAQ市場はIPOルールを厳格化し、一部の中国企業の上場を制限すると報じられた(18日)。今週は22日から中国の全人代が開幕する。中国の経済政策のみならず、対米関係を占う面でも注目を集めよう。
■現株価水準は、既に来期の業績回復を織り込んだ水準にあり、割安感は無い。世界的な金融緩和(低金利)とデフレから株式市場が消去法で選択されているに過ぎないと見る。しかし、一方で中央銀行等の政策的なサポートもあるだけに大幅な下落の可能性は見込みにくい。ボックス的な動きの継続か。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,900円~19,300 (前回17,900円~19,400円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月15日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月15日)

今期予想EPS 998.11 (前週1015.69円)
来期予想EPS 1451.01 (前週1406.03円)
再来期予想EPS 1455.13 (前週1430.75円)
今期予想PER 20.08 (前週19.87倍)
来期予想PER 13.81 (前週14.35倍)
再来期予想PER 13.77 (前週14.10倍)
来期予想PBR 0.93 (前週0.93倍)
来期予想ROE 6.73% 前週 6.50%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.89% (前週 6.69%)

5月15日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 
5月15日時点の今期コンセンサス予想PER 20.08倍、来期 13.81倍、再来期13.77倍。対象決算期の移行により、来期・再来期ともにやや低下した。既に来期の回復を織り込んだ水準にあり、ここから日経平均株価の上値は限定的であるが、金融緩和効果等から下値不安も少ない。長期ボックス相場の始まりか?

来期予想ベースのプラス企業比率は、 26.430.542.243.755.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、24.125.037.641.053.1%。
来期・再来期は15週ぶりに50%回復であるが、対象決算期移行の影響強い。
来週以降の動きに注目!

 

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。