5月8日妥当レンジ 17,900円~19,400円
自粛解除を視野に置いた動きが本格化

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<自粛制限の緩和・解除が進む>
■国内では8日から「特定警戒都道府県」を除く34県で休業要請の解除等が始まった。国内の新型コロナウイルスの新規感染者数も減少傾向を辿っており、11日は全国で43人だった。治療中患者数(Active Cases:累計感染者から回復者と死者を控除)も4月28日をピークに減少トレンドが明確になっている。
■欧州でも英国以外では、患者数の減少が顕著であり、制限緩和の動きと一致する。ただし、経済活動の一部再開が始まった米国においては、まだ患者数は減少トレンドに入ったとは言えず、経済活動再開に伴う感染の再拡大が懸念される。メキシコ、ブラジル、エクアドルなど中南米が感染拡大期にあり、世界全体としてはまだピークを打ったとは言い難いものの、アフターコロナを視野においた市場の動きが本格化しつつある。
■8日に発表された4月の米雇用統計において失業率は14.7%(前月は4.4%)と跳ね上がった。就業者数も前月から2050万人減少するという内容であったが、6日発表のADP雇用統計により既に織り込まれていたことや、失業者の78%が「一時的な解雇」であることから市場へのマイナスインパクトは生じなかった。
■国内企業(3月決算期)の決算発表が連休明けから本格化している。4月21日から5月11日までに決算発表した645社の内、262社(40.6%)が業績予想の開示を行った。4月中は業績予想を見送る企業が多かったが、新コロナの終息が見えてきた8日、11日の決算発表においては、5割近い企業が予想開示を行っている。市場の不透明感も後退しつつあると言えよう。二番底懸念は、新興国のデフォルトや中央銀行の金融政策の正常化など、中期的な不安は残るものの目先は回避されたと見るべきだろう。
■しかしながら、来期、再来期の企業業績(コンセンサス予想)を視野においても、2万円を超える日経平均株価には割安感はない。日本は、欧米に比べて被害が小さく、回復も速いと見られることから日本株が選好される可能性も考えられるが、基本的には個別物色であるだろう。日常使いの内需関連(小売・外食)の戻りが大きいと思われる。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,900円~19,400 (前回17,800円~19,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月8日)

今期予想EPS 1015.69 (前週1016.07円)
来期予想EPS 1406.03 (前週1402.01円)
再来期予想EPS 1430.75 (前週1437.73円)
今期予想PER 19.87 (前週19.31倍)
来期予想PER 14.35 (前週13.99倍)
再来期予想PER 14.10 (前週13.65倍)
来期予想PBR 0.93 (前週0.91倍)
来期予想ROE 6.50% 前週 6.52%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.69% (前週 6.79%)

5月8日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  

58日時点の来期コンセンサス予想PER 14.35倍、再来期14.10倍。既に、アフターコロナを見込んだ水準にあり、割安感はない。ただし、欧米と比較して、日本はコロナによる被害が小さかったことから日本株が選好される可能性はあるだろう。2番底の可能性は、新興国の(実質的)デフォルトや、中央銀行の緩和政策からの正常化の過程で生じる可能性は残るが先送りされたと見るべきであろう。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 14.426.430.542.243.7
再来期予想ベースのプラス企業比率は、11.924.125.037.641.0
全期間50%割れは14週連続。来期・再来期ベースの40%台回復は対象決算期移行の影響強い。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。