5月1日妥当レンジ 17,800円~19,200円
市場はコロナ以前の業績予想水準をほぼトレース?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<ロックダウン緩和を視野に置いた動き強まる>
■世界で行動規制の緩和に向けた動きが強まりつつある。ドイツ政府は6日、国内の全商店の営業やプロサッカーリーグの再開などを認める経済規制の緩和策を発表した。米国では11日までに31州で飲食店や小売店の営業再開が認められる。
■こうした動きは、治療中患者数(Active Cases:累計感染者数から死者と回復者を控除)が減少傾向にあることに加えて、抗体検査の結果から認識されている患者数よりも実際の患者数が10倍以上多いと推察され、実質的な致死率が低いと考えられることによる。また、経済への影響に配慮が滲む。
■しかし、米ワシントン大学では、行動規制の緩和によって感染リスクが高まることから米国の死者数は8月上旬までに13万5千人に上るとの最新予測を6日に公表しており、感染拡大の再発リスクを抱えていることに留意する必要があるだろう。
■国内では4日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国を対象に緊急事態宣言の31日までの延長が正式決定した。日本は治療中患者数は4月28日をピークに減少トレンドにある。31日を待たずに自治体によっては自粛緩和の動きが加速してゆくものと考えられる。
■このように新型コロナウイルス感染の終息を視野に、株式市場は強含みで推移している。足もとで発表される経済指標の悪化は織り込まれており、二番底はひとまずは回避されたと考えるべきであろう。しかしながら、株式市場の動きはコロナ以前に回帰することを視野に置いたものと考えられ、生活様式が変化する可能性、膨張した中央銀行の財務リスクや財政赤字の拡大、新興国のデフォルトの可能性などは考慮されていないように見受けられる。
■5月1日時点のコンセンサス予想EPSは、来期、再来期ベースにおいて前週比増加したが、対象決算期の移行による影響による。また、企業が新年度の業績予想を非開示にすることや、コロナの影響で十分な取材が出来なくなっていることなどから、アナリスト予想の更新が遅れている可能性も高いと思われる。4月21日から5月7日までに決算発表を行った3月期決算企業は僅か306社。その内、業績予想を開示した企業は99社と約3分の1に留まっている。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
17,800円~19,200円 | (前回17,600円~19,000円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月1日)
今期予想EPS | 1016.07円 | (前週1050.63円) |
来期予想EPS | 1402.01円 | (前週1335.69円) |
再来期予想EPS | 1437.73円 | (前週1413.27円) |
今期予想PER | 19.31倍 | (前週18.33倍) |
来期予想PER | 13.99倍 | (前週14.42倍) |
再来期予想PER | 13.65倍 | (前週13.63倍) |
来期予想PBR | 0.91倍 | (前週0.91倍) |
来期予想ROE | 6.52% | (前週 6.28%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.79% | (前週 6.59%) |
5月1日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
5月1日時点の来期コンセンサス予想 13.99倍、再来期13.65倍。いずれも割安とはいえない水準であるが、今期(20年度)はイレギュラーとして市場が見ている可能性強い。その結果、2番底の可能性は低下しつつある。しかし、コロナ後に(コロナ以前の水準への)回帰を見るのはやや楽観的か。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 18.2%→14.4%→26.4%→30.5%→42.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、26.1%→11.9%→24.1%→25.0%→37.6%。
全期間50%割れは13週連続! 来期ベースの40%台回復は対象決算期移行の影響強い。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |