4月3日妥当レンジ 17,100円~18,500円
感染ピークアウト後も経済再生への道のりは長い

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<「緊急事態宣言」7都府県に発令>
■イタリア、スペインでは1日当りの感染者数・死者数がピークアウトしつつある。しかし、中国の経験則に当てはめれば、ここから封鎖解除まで長い道のりが予想される。中国の1日の感染者数が最大となったのが2月5日(3,892人)、死者数最大が2月13日(254人)、ここから武漢解除まで約2ヵ月を要している。
■米国では感染者数のピークを迎えるのが4月下旬と予想されており、4-6月期の経済は前年同期比(年率換算)30%台のマイナスという厳しい見方が支配的である。3日発表の3月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比70.1万人の減少となったが、これは過去2週の新規失業保険申請数である計1,000万件を含んでいない。今後も1ヵ月以上に亙って数百万件レベルの申請が見込まれるだけに、失業率は20%を超えるとの予想もある。
■日本は漸く、本日に安倍首相が「緊急事態宣言」を7つの都府県を対象に発令する予定。これに合わせて、108兆円の緊急経済対策も発表される見込みであるが、個人の生活防衛への現金給付や中小企業の破綻防止に向けた給付金など今すぐに必要な「実弾」がどの程度含まれているのかが気になるところだ。
■株式市場は、週明けの東京市場から大きく反騰。これはイタリアなど一部の欧州諸国にピークアウトの兆候が現れていることや、米国のNY州での感染者数の増加が横這いになってきたことなどから年後半の経済回復への期待が生じていることが挙げられる。加えて、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国との間で大規模な協調減産が行われる可能性への期待も株価を押し上げた。ただし、OPECプラスのテレビ会議は当初は6日の予定が、ロシアとサウジアラビアの対立から9日頃への延期。日量1,000万バレルと減産幅が大規模なだけに妥結に関しては疑問を禁じえない。
■経済状態の深刻化やそれに伴う企業業績悪化の実態が明確になるのはこれからが本番。現時点では、米国の感染がピークと予想される4月下旬頃を株式市場の底入れ時期であり、反発局面での安易な追従はお奨めできないと考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,100円~18,500 (前回18,200円~19,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月3日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月3日)

今期予想EPS 1171.97 (前週1184.32円)
来期予想EPS 1277.12 (前週1305.62円)
再来期予想EPS 1434.90 (前週1451.01円)
今期予想PER 15.21 (前週16.37倍)
来期予想PER 13.95 (前週14.85倍)
再来期予想PER 12.42 (前週13.36倍)
来期予想PBR 0.84 (前週0.93倍)
来期予想ROE 6.03% 前週 6.25%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.50% (前週 6.44%)

4月3日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  

上下にブレ幅の大きな展開が続いているが、コンセンサス予想EPSの下方シフトから妥当レンジ(3日時点:17,10018,500円)も下方に向かっている。株式市場が再来期(21年度)を視野においていたとしても割安感はあまりない(再来期コンセンサス予想PER 12.4倍)。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 31.328.111.818.718.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、38.334.621.115.426.1
全期間50%割れは9週連続!! 来期ベースは3週連続10%台!!

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。