12月20日妥当レンジ 21,300円~23,000円
米国経済と米国株式市場が日本株のよりどころ?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<金融緩和相場終焉の兆候には要注意>
■先週は、米国の堅調な11月の経済指標(17日:住宅着工件数・鉱工業生産指数、20日:実質個人消費)の発表や、米中貿易協議の第1段階の合意への信頼性の高まりなどから、米国株(ダウ工業株30種平均)は過去最高値を更新した。21日には中国国営の新華社が習近平主席とトランプ大統領との電話会議についてポジティブに伝えた。
■他方で、中国の債務膨張に対する懸念が強まりつつある。中国人民銀行関係者が地方政府系の投資会社等に連鎖的な金融リスクに陥らないよう対応を促した(20日日経報道)。世界銀行は19日に新興国の債務に関する報告書を公表しており、中国の債務比率はGDP比255%(この10年で72ポイント上昇)と増加が目立っている。中国経済に関しては20年も減速が予想されており、日本を含む周辺国への影響が懸念されている。
■国内では11月の貿易統計(18日)において輸出(前年同月比▲7.9%)、輸入(同▲15.7%)となり、輸出に関しては12ヵ月連続のマイナスである。
■これまで金融緩和(マイナス金利)が株価押上げの要因となっていたが、20日に国内長期金利が9ヵ月ぶりにプラスとなった。スウェーデンの中央銀行は19日、家計の債務膨張を懸念して、景気と物価は勢いに欠けるものの、政策金利をマイナス0.25%から0.0%に引き上げた。世界的な金融緩和の流れが変わりつつある兆候とも受け止められる。
■アナリストコンセンサス予想を見る限りでは、現在の株価水準は回復への期待を含んだ水準(割高)であり、期待感が維持されるかどうかが20年の株価を占うと考える。
■さて、年末まで目立った経済指標の発表はなく、薄商いながらブレ幅の小さな展開を予想するが、日本の正月休み中に米ISM製造業PMIや中国製造業PMIが発表される点には留意したい。
<「IFIS/TIWコンセンサス225」は全期間で前週比マイナス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、3週連続で全期間でマイナス。 ただし、「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)では再来期ベースが5週ぶりに50%を超えた。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
21,300円~23,000円 | (前回21,300円~23,100円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月20日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月20日)
今期予想EPS | 1264.81円 | (前週1274.27円) |
来期予想EPS | 1388.68円 | (前週1390.14円) |
再来期予想EPS | 1509.66円 | (前週1511.09円) |
今期予想PER | 18.83倍 | (前週18.85倍) |
来期予想PER | 17.15倍 | (前週17.28倍) |
再来期予想PER | 15.78倍 | (前週15.90倍) |
来期予想PBR | 1.13倍 | (前週1.13倍) |
来期予想ROE | 6.57% | (前週 6.52%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.29% | (前週 6.27%) |
12月20日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
長期金利がプラスに転換したことにより、リスクフリーレートもプラスに。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 40.4%→45.5%→38.6%→45.6%→46.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、42.4%→45.9%→47.2%→46.7%→52.9%。
再来期ベースでは5週ぶりに50%を上回る。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |