12月6日妥当レンジ 21,100円~22,800円
米中追加関税第4弾の期限を目前に身構える市場

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米中貿易協議の行方と英議会選挙>
■先週は、米中貿易協議の部分合意に関して発せられるコメントや情報に一喜一憂すると同時に、強弱入り混じった経済指標の発表に揺れる展開であった。結果的には、6日に発表された11月の米雇用統計において、非農業部門雇用者数が予想を大幅に上回る増加であったことから、米経済に対する強気の見方が維持された。
■11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が26.6万人増と市場予想(18.8万人増)を大幅に上回った。失業率も3.5%と前月から0.1ポイント低下するとともに平均時給も前年比+3.1%と前月比0.1ポイント改善した。
■今週は、米FOMC(10-11日)、ECB理事会(12日)が予定されているが、金融政策の変更は見込まれていない。何より注目は12日の英議会選挙と、15日に迫った米国の中国への制裁関税第4弾の発動期限である。
■英議会選挙では保守党が単独過半数を獲得できれば来年1月末のEUからの離脱が決定する。しかし、単独政権を獲得できずに連立となれば再び大きく混乱することになる。
■米中貿易協議の行方は予断を許さない状況にあり、仮に部分合意が成立するとしても期限の15日が迫る状況において、市場が大きく身構える可能性も指摘できる。
■その他の経済指標では、13日の日銀短観と米小売売上高(11月)が注目される。

< 「IFIS/TIWコンセンサス225」は全期間で前週比マイナス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、全期間でマイナスであった。 「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)においても全期間で50%割れ。特に今期・来期が弱く、企業業績の本格回復を見込むにはまだ時期尚早と思われる。
■15日の制裁関税第4弾を回避できたとしても、単純に強気になるのはリスクが高そうだ。米中関係は香港、台湾、ウイグル自治区など地政学的問題や通信機器などIT関連での火種も多い。また、北朝鮮が一方的に設定した非核化交渉の期限も年末に迫る中、煽動的な行為も増加する危惧も有る。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,100円~22,800 (前回21,000円~22,800円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月6日)

今期予想EPS 1276.84 (前週1281.92円)
来期予想EPS 1392.74 (前週1395.03円)
再来期予想EPS 1515.64 (前週1516.35円)
今期予想PER 18.29 (前週18.17倍)
来期予想PER 16.77 (前週16.70倍)
再来期予想PER 15.41 (前週15.36倍)
来期予想PBR 1.11 (前週1.10倍)
来期予想ROE 6.60% 前週 6.57%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.38% (前週 6.43%)

12月6日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



マイナス金利は大きく縮小。リスクフリーレートを-0.015% (12/6現在)とした場合の妥当レンジ は21,20022,900円とやや下方に。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 51.4%→45.640.445.538.6
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.4%→50.8%→42.445.947.2
50%割れが続いており、回復を見込むのは時期尚早か?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。