11月8日妥当レンジ 21,000円~22,800円
来期の回復シナリオ次第では、底堅い展開も

2019/11/12

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米中貿易協議の部分合意の行方は?>
■先週は、10月のISM非製造業景況指数(5日)が市場予想を上回ったことや、10月の中国貿易統計(8日)が前年同月比マイナスながら市場予想よりは良かったことなどもあり、株式市場は好反応となった。
■7日に中国商務省が、米国との貿易協議において発動済みの追加関税を段階的に撤廃する方針で一致したと発表。しかしながら、同日にナバロ米大統領補佐官(通商担当)が「現時点で合意は無い」と反論し、トランプ大統領も8日に「合意していない」と述べた。こうした食い違いが生じているのは、米政権内で対中強硬派が巻き返しているとの見方もあり、部分合意に達せられるかは再び微妙な状勢と思われる。貿易協議の部分合意署名についても当初予定の11月から12月にずれ込むことも明らかになった。また、署名場所もトランプ大統領が米国本土での開催に意欲を示す一方、欧州各国での開催も取り沙汰されており、不透明感が強まっている。
■今週の経済指標の発表は、日本:7-9月期実質GDP速報値(14日)、中国(10月)鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(14日)、米国(10月):小売売上高(15日)が予定されている。それ以上に、米下院におけるトランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る公聴会(13日、15日)が注目を集めそうである。

<  「コンセンサスDI」は来期・再来期ベースで50%台に>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、今期ベースでは大きく減少したが、来期・再来期は小幅な動き。 「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は来期ベースに加えて、再来期も50%を上回った。
■長期金利の上昇からマイナス金利(リスクフリーレート)を考慮しても現在の株価水準には割高感が強まりつつある。しかし、今期で業績底打ちして来期回復するシナリオが維持されれば、株価の下支えとなるだろう。ただし、回復シナリオの前提に、米中貿易戦争の緩和を大きく見込むとするならば、第四弾(スマートフォンなど1600億ドル分)の関税引上げ予定日(12月15日)を見据えて波乱の展開も。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,000円~22,800 (前回20,800円~22,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月8日)

今期予想EPS 1311.38 (前週1341.21円)
来期予想EPS 1399.81 (前週1399.21円)
再来期予想EPS 1506.07 (前週1514.07円)
今期予想PER 17.84 (前週17.04倍)
来期予想PER 16.71 (前週16.33倍)
再来期予想PER 15.53 (前週15.09倍)
来期予想PBR 1.11 (前週1.08倍)
来期予想ROE 6.67% 前週 6.64%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.49% (前週 6.64%)

11月8日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



日経平均株価は、引き続き上昇。長期金利の上昇からリスクフリーレートを0.065% (11/1現在)とした場合の妥当レンジ は21,30023,100円と前週よりも100円低下した。割高感が目立っており、さらにもう一段上昇するには、米中の部分合意締結など前向きな材料が必要になるだろう。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.450.6%→49.050.4%→51.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、41.952.8%→62.244.151.4%。
再来期ベースも50%台回復、来期以降の回復シナリオが強まっている。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

株価の上昇と、予想EPS(移動平均)の減少から予想PERは上昇傾向。18倍台がひとまずは天井圏と思われる。

前年の同時期は上方修正 107社に対して下方修正 100社、今回は73164と前年同期より遥かに下ブレが大きい。

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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