11月1日妥当レンジ 20,800円~22,500円
目先は堅調な米国市場の上昇に追従すると思われるが

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米雇用統計は予想以上に堅調>
■注目された日米の中央銀行による金融政策決定会合は、ほぼ従前予想どおりで無難に通過。1日発表の米雇用統計では、非農業部門雇用者数において9月分が+13.6万人から+18万人へと上方修正され、10月分は+12.8万人増と市場予想(+約9万人)を上回った。GMのストの影響で自動車部門の就業者数が前月から4.2万人減少しており、これを考慮すれば高い水準を確保したと言える。ストは既に解除されており、11月分はこの部分が上乗せされることが見込まれる。米雇用統計が堅調であったことや、1日に発表された10月のISM製造業景気指数が3ヵ月連続で50を下回ったものの、前月より若干回復したことや、米中の閣僚級の電話での追加協議(1日)において「農業・金融サービスなどで追加合意した」と前向きな発言が出ていることなどを受け、今週は米国株に連動した堅調な展開が続くと思われる。
■ただ、もう少し中期的な視点(3~6ヵ月?)で見るならば世界的な経済環境の悪化が懸念される。日本株に関しては、マイナス金利の影響から債券から株式や不動産・その他の資産への資金移動が生じていることで強気の見通しもあるが、下方修正がさらに続くようであればPER水準では許容範囲(18倍台?)に達してしまう可能性も考えられる。ただし、配当利回りではまだ2%近い水準(東証1部)を保っており、大崩れするような状況にはないと考える。

< 「IFIS/TIWコンセンサス225」は全期間で前週比マイナス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、全期間で小幅マイナス。 「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は来期ベースが若干50%を上回ったが、今期・再来期は50%割れ。半導体・電子部品化関係が比較的堅調な一方で、資本財・医薬品などが弱い様子。
■10月最終週の上場企業全体での下方修正数は前年同時期を上回っており、この傾向が続くようであれば株価上昇にブレーキがかかると思われる。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,800円~22,500 (前回20,700円~22,400円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月1日)

今期予想EPS 1341.21 (前週1342.87円)
来期予想EPS 1399.21 (前週1403.80円)
再来期予想EPS 1514.07 (前週1514.45円)
今期予想PER 17.04 (前週16.98倍)
来期予想PER 16.33 (前週16.24倍)
再来期予想PER 15.09 (前週15.05倍)
来期予想PBR 1.08 (前週1.07倍)
来期予想ROE 6.64% 前週 6.61%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.64% (前週 6.60%)

11月1日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



日経平均株価は、一段と上昇。リスクフリーレートを-0.185% (11/1現在)とした場合の妥当レンジ 21,40023,200円を昨日超えた。
ここからは企業業績の悪化を視野に頭が重くなってくるように思われる。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 37.044.450.6%→49.050.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、36.641.952.8%→62.244.1
再来期ベースのコンセンサスDIが再び悪化。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

株価の上昇と、予想EPS(移動平均)の減少から予想PERは上昇傾向。18倍台がひとまずは天井圏と思われるが、企業業績見通しが一段と悪化するようであれば間もなく到達する。

前年の同時期は上昇修正 109社に対して下方修正 135社、今回は119161と前年同期より下ブレが大きくなっている。

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。