9月6日妥当レンジ 19,900円~21,600円
経済環境はさらに悪化するも、債券からの資金シフト?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<マイナス金利が株高を齎している???>
■先週は、リスク回避的な動きが緩和され、日経平均株価は1週間で500円近く上昇し、21,000円台を回復した。その理由としては、1)香港政府が「逃亡犯条例」改正案を全面撤回したこと(4日)、2)英国のEU離脱延期を求める法案が下院(4日)、上院(6日)ともに可決され、ジョンソン首相が求める解散総選挙が見送られる模様であること、3)米中閣僚級貿易協議が10月に開催されると報道されたこと、による。さらに米ムニューシン財務長官が10月の閣僚級米中貿易交渉開催を控えて、協議が大きく前進したことを明らかにしたことも追い風となっている。
■しかし、経済指標では悪化を示す内容のものが多い。ISM製造業PMI(8月分・3日発表)は、前月比2.1ポイント低下して49.1と3年ぶりに50を下回った。8月の米雇用統計(6日発表)は非農業部門雇用者数の増加が前月比+13万人(予想は+16万人)に留まった。8月の中国の貿易統計は輸出入ともに前年同月を下回った。国内でも4-6月のGDP改定値(9日)が前期比+1.3%と速報値から0.5ポイント下方修正され、8月の景気ウオッチャー調査(9日)も先行き判断DIが39.7と14年3月以来の低水準となった。
■今週は、12日にECB理事会が予定されており、利下げの実施が焦点となる。他には、米小売売上高(8月分・13日発表)、ミシガン大学消費者信頼感指数(9月速報値・13日)が予定されている。
■米中貿易協議が一気に解決に向かうとは見込み難い中、世界経済減速感は一段と増している。また、中央銀行の利下げ余地も限られる。こうした環境で株価が上昇するのは“単なる楽観”だけではなく、マイナス利回りとなる債券から株式に資金が移動している可能性も考えられるのかもしれない。
<「コンセンサスDI」は、全期間で12週連続50割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、全期間でマイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は12週連続50割れであった。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,900円~21,600円 | (前回19,800円~21,400円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月6日)
今期予想EPS | 1375.32円 | (前週 1377.43円) |
来期予想EPS | 1416.36円 | (前週1420.67円) |
再来期予想EPS | 1522.49円 | (前週1530.29円) |
今期予想PER | 15.41倍 | (前週15.03倍) |
来期予想PER | 14.97倍 | (前週14.57倍) |
再来期予想PER | 13.92倍 | (前週13.53倍) |
来期予想PBR | 1.01倍 | (前週0.99倍) |
来期予想ROE | 6.72% | (前週 6.76%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.95% | (前週 7.08%) |
9月6日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジ上限近くに日経平均株価は上昇。
株価は“楽観的”なのか、それともマイナス利回りの債券から株式へのシフトが生じているのか?
来期予想ベースのプラス企業比率は、 40.5%→41.9%→30.2%→39.2%→29.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、37.3%→47.4%→30.1%→38.9%→31.6%。
「コンセンサスDI」は一段と水準低下。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |