8月16日妥当レンジ 19,600円~21,200円
9月のECB/FOMCを視野に為替動向に注意

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<日経平均2万円割れは、為替がポイントになる>
■14日のNYダウは前日比800ドルの今年一番の下げ幅であった。これを引き起こしたのは、1)長短金利の逆転が生じたこと、2)14日に発表された中国の経済統計(小売売上高・鉱工業生産・固定資産投資)がいずれも市場予想を下回ったこと、3)同じく14日発表のドイツの4-6月期実質GDPが前期比▲0.1%とマイナス成長になったことが挙げられる。
■トランプ大統領が同日に米大手銀3社のトップと電話会議を行ったことや、ロイター通信が、中国高官が「個人の可処分所得を押し上げる計画を実施する、と述べたと報じたことなどから、警戒感が後退。今週23日にジャクソンホールにおいてパウエルFRB議長の講演が予定されている。9月のFOMCでの利下げに肯定的なコメントが期待されており、19日のNYダウは26,000ドル台を回復した。
■9月には、ECB(9/12)、FOMC(9/17-18)、日銀(9/18-19)と金融政策決定会合が続く。ECB、FOMCにおいては追加緩和(利下げ)が確実視されており、日銀の対応に注目が集まっている。マイナス金利の深堀り(マイナス0.2~0.3%)との観測もあるが、現段階では動けないとの見方もある。いずれにしても、欧米での金融緩和から円高圧力が強まると予想される。
■下限の目処をPBRで計るとするならば、既に2016年初頭の安値水準(0.99倍)にあり、当面は2万円割れの可能性は高くはないと思われるが、コンセンサス予想が切り下がる現状では上値は重く、本格反騰の可能性は低い。底割れするかどうかは、来期以降の業績見通しによる。大幅に悪化するような環境変化としては為替が挙げられるだろう。米利下げ期待で米国株は押し上げられても日本株への波及は限定的と考える。

<「コンセンサスDI」は、全期間で9週連続50割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、全期間でマイナスであった。「コンセンサスDI」は全期間で9週連続50割れとなった。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,600円~21,200 (前回19,900円~21,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月16日)

今期予想EPS 1384.71 (前週 1390.23円)
来期予想EPS 1440.11 (前週1446.56円)
再来期予想EPS 1539.08 (前週1540.91円)
今期予想PER 14.75 (前週14.88倍)
来期予想PER 14.18 (前週14.30倍)
再来期予想PER 13.27 (前週13.42倍)
来期予想PBR 0.97 (前週0.99倍)
来期予想ROE 6.82% 前週 6.89%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.14% (前週 7.15%)

8月16日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



妥当レンジ下限は一段と低下。

 

 


来期予想ベースのプラス企業比率は、 42.248.147.640.541.9
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.045.143.337.347.4
再来期ベースはやや上向くが。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 


PBR1.0倍割れは、20162月と、20112012年。その当時とはBPS1株純資産)の水準が大きく異なっており、それが日経平均2万円を支えている。
[8/16
現在のBPSは、20,217円。]

 


1Q時点としては多い下方修正、2Q時点では18年度を上回る可能性も

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。