8月9日妥当レンジ 19,900円~21,500円
日経平均2万円の攻防、晩秋には18,000円台に?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米中貿易摩擦の尖端化が進む>
■先週も株価下落が続く展開となった。FRBに対する追加緩和圧力が強まり、米長期金利は低下するものの社債利回りがむしろ上昇しており、質への逃避が顕在化しつつある。
■中国人民銀行の人民元の基準価格引下げが続く中で、米国は5日に、中国を「為替操作国」に認定した。中国側はそれに対して反論しつつも、8日朝に基準値を7.0039元/ドルと2008年5月以来となる7元台に設定しました。その結果、中国当局が穏やかな元安を容認しているとの見方が市場で強まっている。
■8日発表の7月の中国貿易統計では、米国向け輸出が前年同期比▲8%、輸入が▲28%と悪化傾向が続いている。9月1日には米国が中国への制裁関税第4弾を発動する見込みであり、悪化傾向が強まる可能性が指摘できる。
■9日にトランプ大統領は「中国と合意する準備が出来ていない」と語り、9月に見込まれていた米中閣僚級会議が中止される可能性が強まった。
■今週は、中国主要指標(小売売上高・鉱工業生産・固定資産投資、いずれも14日)米国小売売上高・鉱工業生産(15日)の発表が予定されているが、内容が良くても反応は薄く、悪ければ株価の下押しに繋がる可能性が指摘されよう。
<「コンセンサスDI」は、全期間で8週連続50割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、今期・来期ベースで大幅なプラスとなった。しかしながら、これはソフトバンクG(9984)の影響によるものであり実態的にはマイナス。「コンセンサスDI」は全期間で8週連続50割れとなった。特に、再来期のマイナスが大きい。
■当面は日経平均2万円の攻防が続くと考える。2016年初頭にPBR0.99倍を記録しており、現在の日経平均のBPS(20,082円)に当てはめると株価19,881円となる。米中の関係改善が見込めない中では、2Q決算段階(10~11月)で企業側の通期予想の下方修正が広がると同時に来年度のコンセンサス予想が減益に転じると予想する。その段階では、アベノミクス前のPBR0.9倍前半が視野に入る可能性もあるだろう。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,900円~21,500円 | (前回20,300円~22,000円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月9日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月9日)
今期予想EPS | 1390.23円 | (前週 1381.17円) |
来期予想EPS | 1446.56円 | (前週1435.92円) |
再来期予想EPS | 1540.91円 | (前週1550.97円) |
今期予想PER | 14.88倍 | (前週15.27倍) |
来期予想PER | 14.30倍 | (前週14.69倍) |
再来期予想PER | 13.42倍 | (前週13.60倍) |
来期予想PBR | 0.99倍 | (前週1.01倍) |
来期予想ROE | 6.89% | (前週 6.84%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.15% | (前週 7.01%) |
8月9日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジ下限は20000円割れ。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 38.5%→42.2%→48.1%→47.6%→40.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.9%→47.0%→45.1%→43.3%→37.3%。
再来期ベースで40%割れ。先行きの見通し悪化か?!
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |