兜町はカジノより儲けやすい

2019/02/07

(要旨)
■短期投資の本質はカジノと同じ
■カジノの期待値はマイナス
■投資家はリスク回避的
■株式投資(短期)の期待値はプラス
■投資初心者が儲かるとは限らないが
■(補論)株価が予想できない理由

(本文)
■短期投資の本質はカジノと同じ
株式投資には、短期と長期の二種類ある。短期投資は企業の価値が変化しないのに株式の価格が変化する事を利用して儲けようとする行為であり、長期投資は企業が生み出す付加価値の分け前に与かろうという投資である。

長期投資については別の機会に考えるとして、今回は短期投資(今日買って明日売って値上がり益を得ようとする行為)について考えよう。

短期投資の本質は、カジノのルーレットと同じである。赤が出るか黒が出るかを論理的に予測する事は出来ないが、どちらかに賭けて偶然の幸運を祈るのがルーレットであるが、株式の短期投資も株価が上がるか下がるかを論理的に予測する事が出来ない中で、どちらかに賭けて偶然の幸運を祈るものだからである。

ちなみに、天才的な才能のある人にとっては短期的な株価を予測することが可能な人もいるようだが、本稿ではそうした人の事は忘れて一般の投資家について論じることとする。

■カジノの期待値はマイナス
カジノで賭けを楽しむ場合、期待値はマイナスである。カジノ会社のコストと利益の出所は客が払う掛け金と客が受け取る金額の差である事を考えれば、当然であろう。

もちろん、だからといって「カジノへ行くな」などと言うつもりは毛頭ない。カジノの豪華な雰囲気が好きだという人もいれば、「当たれ」と念じながら結果を待つのが楽しいという人もいれば、少額の掛け金で大金を手にする可能性を狙って「当たったら何をしよう」とワクワクするのが楽しい、という人もいるだろう。「自分には霊感があるから」と考えている人には再考を促したい気もするが(笑)。

■投資家はリスク回避的
しかし、株式投資の期待値はプラスだと考えられる。その根拠として筆者が考えているのが、投資家たちはリスク回避的だ、という事である。

「100円儲かった時の嬉しさよりも、100円損した時の悔しさの方が大きい」というのが行動経済学という研究分野の示すところである。そうであれば、100円儲かるか100円損するか五分五分(期待値ゼロ)の投資を行う投資家は少ないはずである。

ということは、「明日の株価が900円になるか1100円になるか確率が五分五分だ」と投資家たちが考えている銘柄の今日の株価は1000円ではあり得ない、という事になる。999円なのか980円なのかは、投資家たちがどれくらいリスク回避的であるかによるが、1000円より安いことは間違いなかろう。

■株式投資(短期)の期待値はプラス
明日の株価の期待値が1000円である銘柄が、今日買うと1000円未満で買えるという事は、株式投資(短期)の期待値はプラスである、という事になる。

「株価は上がるか下がるかわからないが、今後半年間株価が下がらなければ配当が受け取れる。銀行預金より得だ」と説いても「値下がりするリスクがあるなら買いたくない」という投資家が多いわけで、直感的にもこの結論は納得出来るものだと言えよう。

■投資初心者が儲かるとは限らないが
上記はあくまでも株式への短期投資の期待値がプラスであるという論考を示したもので、「投資初心者でも儲けられる」という事ではない。

まずは、手数料と税金の問題があるので、よほど手数料の安いところを選ばないと短期売買で儲ける事は難しいであろう。

それから、初心者は株価が上がると「急いで買わないと」と焦り、株価が暴落すると「この世の終わり」が来そうな気がして狼狽売りをしてしまい、結局高値で買って安値で売る場合も多いだろう。

反対に、「初心者は損切りが下手だ」とも言われているので、損を抱えた銘柄を塩漬けにしてしまい、儲けのチャンスを逸してしまう(場合によっては更に損失を拡大してしまう)ことも多いかもしれない。

そうした事に十分ご留意いただいた上で、投資はあくまでも自己責任でお願いしたい。

■(補論)株価が予想できない理由
以下では、「自分は株価の予想ができる。ルーレットの予想より株価の予想の方が簡単だ」と考えている人へのアドバイスである。そう考えていない人はお読みいただく必要はない。

読者が特殊な才能を持っていない限り、株価の予想はルーレットの予想と同じである。その理由はいろいろあるが、最大のものは「プロの半分が値下がりを予想して売り注文を出し、プロの半分が値上がりを予想して買い注文を出した結果として成立しているのが今の株価である」ということである。

明日の決算を予想して株を買う事はできるが、プロたちも明日の決算を予想して株を売買しているわけであるから、プロよりも正確な決算の予想が出来るのでなければ、勝ち目はないだろう。

その意味では、地元のレストランチェーンの株は狙い目かもしれない。「最近、味付けが改善し、急に混み始めた」といった情報は、地元の人にしか伝わっておらず、「プロたちが掴めていない情報を自分だけが知っている」可能性があるからである。そうした例外を除いては、自分が株価を予想できると考えるのは危険であろう。

(2月4日発行レポートから転載)

久留米大学教授 TIW客員エコノミスト
塚崎公義『経済を見るポイント』   久留米大学教授 TIW客員エコノミスト
目先の指標データに振り回されずに、冷静に経済事象を見てゆきましょう。経済指標・各種統計を見るポイントから、将来の可能性を考えてゆきます。
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