バブル期の投機はカジノより「合理的」かも知れない

2021/02/05

■バブルだと思う投資家は売る人が多いが
■バブルっぽい時でも投機の期待値はプラスかも
■主観的な期待値が大きければ投機を楽しめる
■くれぐれも投機は小遣いの範囲内で

(本文)

前回の拙稿「バブルが怖くても積み立て投資は続けよ」https://column.ifis.co.jp/toshicolumn/tiw-tsukasaki/131657では、投資初心者を対象に、老後資金は積み立て投資が基本であり、バブルっぽい時でも積み立てをやめるべきではない、という事を記した。今回は株式投資で投機を楽しもうと考えている投資家を対象に、バブルっぽい時の投機のチャンスとリスクについて記すこととする。

■バブルだと思う投資家は売る人が多いが
最近のバブルは、人々がバブルか否か判断がつかない間に成長するため、政府日銀のバブル潰しが行い難く、だからこそ成長するのだ。したがって、今がバブルであるか否か、後日振り返る事は可能でも、現時点で判断する事は困難なのである。

そのあたりについては、拙稿 https://column.ifis.co.jp/toshicolumn/tiw-tsukasaki/125836を併せて御参照いただければ幸いである。

そうした時、一般的な投資家は「今はバブルかも知れず、そうだとすれば暴落するかも知れないから、早く売ろう」と考えがちである。大事な老後資金を株式投資で運用している人であって、相場感から売り買いしている人であれば、怖がるのはむしろ自然かも知れないし、売る人が多いことも納得できる。

しかし、小遣いの範囲内で株式投資を投機として楽しもうと考えている人にとっては、バブルっぽい時の株式投資はカジノへ行くより合理的かも知れない。

■バブルっぽい時でも投機の期待値はプラスかも
バブルっぽい時でも、バブルだとは限らない。もしも今がバブルでなければ、株式への短期投資の期待値はプラスであろう(拙稿https://column.ifis.co.jp/toshicolumn/tiw-tsukasaki/99635御参照)。むしろ、人々が怖がっている時であるからこそ「儲かりそうな投資案件が容易に手に入る」かも知れない。

もしも今がバブルであったならば、長期的な期待値はマイナスとなる。今の株価よりバブル崩壊後の株価の方が低いからである。もっとも、短期的な期待値がマイナスとは限らない。バブルの初期に於いてはバブルが崩壊して暴落したとしても損失は限定的であるから、バブルが膨張を続けて大儲けできる可能性の方が大きいかも知れないわけだ。

つまり、「今がバブルである可能性はどれほどか」「今後短期間でバブルが崩壊する確率はどれほどか」「バブル崩壊後の株価が今よりどれくらい低いのか」といった要素を総合的に考察する必要があるわけで、バブルっぽい時でも、期待値がプラスなのかマイナスなのかは明確ではないわけだ。

カジノの期待値が明確にマイナスなのと比べると、投機の対象としてはカジノより面白そうだ。

■主観的な期待値が大きければ投機を楽しめる
以上は客観的な期待値の話であるが、主観的な期待値は更に大きいかも知れない。投機を好む人は「今はバブルではない」と考えたがる傾向がありそうだし、「バブルだとしても、初期だから簡単には崩壊しない」「バブル崩壊前に売り抜けて大儲けできる可能性が高い」と考える人も多いだろう。

バブルは、その定義からして「いつ崩壊するかわからない」ものだ。5分後に崩壊するかも知れないが、1年後までバブルが拡大を続けてから崩壊するのかも知れない。後者であれば、売り抜ける可能性も大きいだろうし、その場合の利益も大きいだろう。それを期待してワクワクしながら買うのは、投機の楽しみ方としては悪く無いだろう。

■くれぐれも投機は小遣いの範囲内で
もちろん、欲に目が眩んでバブル崩壊の確率を過少に見積もっている投機家もいるだろうし、「自分は他の投機家より賢いからババを掴む可能性は低い」といった根拠の薄弱な過信から投機を行っている投機家もいるだろうから、要注意である。

カジノで遊ぶ時は、期待値がマイナスだと知りながら遊ぶわけだ。それと比べるとバブル期の投機は期待値がプラスだと思って遊ぶわけなので、楽しめるのは良いことだが、つい大金を投じたくなってしまうリスクも伴っている。

投機は投機であり、大切な老後資金を投じるべきでない事は当然であり、借金をしてまで投機をするなどというのは言語道断であろう。

バブルかも知れないと思う時の株式投機は、くれぐれも遊びと割り切って、小遣いの範囲内で楽しむ、という事だけは忘れないようにしたいものだ。

余談であるが、「自分が他の投機家より賢い」と思っている投機家は、全体の半分より多いと筆者は考えている。人間とはそういうものだからである。

サラリーマンで人事考課に不満を持つ人は多いが、「自分の評価が低すぎる」という人は多くても、「自分の評価が高すぎる」と不思議がっている人は滅多にいない。

カジノのルーレットでさえも、自分は予測能力があるから儲かるはずだ、と思い込んでいる人がいるのだ(笑)。気をつけたい。

本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係が無い。また、決して読者に投機を勧めているわけでもない。くれぐれも投機は小遣いの範囲内で自己責任でお願いしたい。

(2月4日発行レポートから転載)

TIW客員エコノミスト
塚崎公義『経済を見るポイント』   TIW客員エコノミスト
目先の指標データに振り回されずに、冷静に経済事象を見てゆきましょう。経済指標・各種統計を見るポイントから、将来の可能性を考えてゆきます。
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