日本の財政は破綻しない

2019/06/21

(要旨)
・「日銀に紙幣を印刷させれば」等々は禁じ手と考える
・日本人投資家が買うから日本政府は安泰
・少子化で、数千年すれば政府の借金は消滅するかも
・10年待てば気楽に増税できる時代が来る
・国債が暴落しても政府が倒産するわけではない

(本文)
・「日銀に紙幣を印刷させれば」等々は禁じ手と考える
政府は絶対に破産しない。日銀に紙幣を印刷させて国債をすべて償還すれば良いからだ。以上終わり。という事で筆者の正しさは完璧に証明されたわけだ。

しかし、それでは読者の欲求不満が残るだろうから、本稿ではそれは禁じ手としよう。「ハイパーインフレを招きかねないから使わない」というわけだ。

高率の財産税を課せば、やはり問題は解決する。個人金融資産が1800兆円あるのだから、それに60%の資産課税をすれば、1100兆円の政府債務は簡単に返済できる。以上終わり。

しかし、これも暴動が起きそうなので、本稿では禁じ手としておこう。しかし、「毎年1%の資産課税を60年間続ける」という選択肢はどうであろうか。これなら暴動は起きないだろう。

まあ、読者の欲求不満を招かないために、本稿では100歩譲って「政治家は金持ちだから、資産課税には反対するはずだ」という事で選択されない事にしよう。

じつは筆者は高率の相続税を主張している。特に子も配偶者もいない高齢者が他界した時には、相続税率は100%でも良いと考えている。50歳未婚率が上昇したり、子のいない夫婦が増えたりしているので、数十年以内に巨額の相続税が国庫に入るだろう。しかし、同様に100歩譲ってこれも選択されない事にしよう。

・日本人投資家が買うから日本政府は安泰
日本人投資家にとって、日本国債を買う事は、日本政府が破綻して国債が紙屑になるリスクを抱える事になる。しかし、日本国債を買わないと、他に買う物がないのだ。

日銀に預金しても、日銀券も持っていても、メガバンクに円建ての預金をしても、所詮は日本政府の子会社が発行した「日本銀行券」を持っているに過ぎないので、リスクが減る事はあり得ない。

日本政府の信用リスクだけを考えれば、米国債を持つという選択肢もあろうが、今度は為替リスクを負うことになる。

「明日までに日本政府が破産する確率は円高ドル安になる確率より低いから、とりあえず明日までは日本国債で運用しよう」と多くの投資家が考え、明日も同様だとすると、日本政府はいつまでも安泰なのである。

なお、この点に関しては、拙稿「財政破綻を懸念する投資家が日本国債を買う理由」を併せて御参照いただければ幸いである。

・少子化で、数千年すれば政府の借金は消滅するかも
あえて極端な話をしよう。数千年経つと、少子化で日本人は最後の一人となるだろう。その人が相続した個人金融資産1800兆円は、その人が他界すると国庫に入るので、日本政府の借金は自動的に消える事になる。

実際にそうなるわけではなかろうが、頭の整理としては重要なことだ。「日本政府は巨額の借金を抱えているから破産するに違いない」という論者が間違いである事がわかるからだ。

今ひとつ、「財政赤字は後世に負担を押し付ける世代間不公平だ」という議論にも疑問が付く。財政赤字だけを考えればその通りであろうが、遺産の事も考えれば、世代間不公平など存在しないのだ。

存在しているのは、遺産が相続できる子とできない子の「世代内不公平」なのだ。筆者が相続税の増税を説いている理由は、ここにあるのだ。

・10年待てば気楽に増税できる時代が来る
筆者は何も本気で数千年間にわたって財政赤字を放置しようと考えているわけではない。10年待てば、今より遥かに増税しやすい時代になるのだから、その時に思い切って増税をすれば良いのだ。

10年経つと、少子高齢化による労働力不足が一層深刻化し、「景気が良いと超労働力不足、景気が悪くても少しは労働力不足」という時代になるだろう。

そうなれば、「増税して景気が悪化したら失業が増えてしまう」という増税反対論が出なくなり、「気楽に」増税出来るようになるはずだ。

もしかすると、増税でインフレ懸念を抑えるようになるかも知れない。インフレ懸念を金融引き締めで抑えようとすると、政府の利払いが急増しかねないので、「金融緩和と増税」というポリシーミックスが採用されるかも知れないのだ。

そうなれば、増税はインフレ抑制と財政再建の一石二鳥の政策として、頻繁に用いられる事になるかも知れない。

・国債が暴落しても政府が倒産するわけではない
国債が暴落する可能性は、常にある。投資家たちが「日本政府が破産する」と思えば国債を売るからだ。上記のように、日本人投資家は為替リスクを恐れているので米国債より日本国債を選ぶ傾向にあるが、日本政府の破産可能性が高いと判断された時には米国債を買うかも知れないのだ。

もっとも、それで日本政府が破産するというわけではない。国債は満期になった時に償還すれば良いので、それまでは暴落しても気にしなくて良いからだ。

新規に国債が発行できないため、国債を償還する資金は必要となるが、これも資産を売却すれば当面は凌げる。「償還日を待たずに、償還が近づいた国債を暴落した値段で購入してしまう」という選択肢もあろう。

政府は、巨額の外貨準備を保有しているから、これを売却するだけでも相当長い期間にわたって期日が近づいた国債を購入し続ける事が出来るはずである。

そうしている間に国債の暴落が止まれば良いし、止まらなければ「禁じ手を破って、日銀が紙幣を印刷して発行済み国債を買い戻す」とアナウンスをすれば良いのである。

投資家たちは日本政府が破産しないと考えて国債を買い戻すであろう。新規の発行も可能になるはずだ。それにより政府の資金繰りが改善すれば、実際には紙幣を印刷する必要もなく、インフレにもならないだろう。政府は強いのである。

(6月19日発行レポートから転載)

久留米大学教授 TIW客員エコノミスト
塚崎公義『経済を見るポイント』   久留米大学教授 TIW客員エコノミスト
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