株の長期投資は期待値がプラスである

2019/03/07

(要旨)
■投資家がリスクを嫌うから
■企業はリスクを嫌うから、企業の期待値はプラス
■株式保有は企業の一部を所有するもの
■経済は成長するから
■損得以外にも長期投資はオススメ(余談)

(本文)
■投資家がリスクを嫌うから
前回、株式の短期投資の期待値はプラスであると記した。その根拠は「投資家たちはリスク回避的であるから、明日の株価の期待値と今日の株価が同じなら買わない。したがって、今日の株価は明日の株価の期待値より低いはずである」ということであった。

詳しい内容は前回の拙稿をご覧いただくとして、上記の「明日の株価」を「10年後の株価」と差し替えても、まったく同じ事が言える。10年間の配当分を株価上昇として計算しなおせば、の話であるが。

「株価は上がるか下がるかわからないが、仮に株価が一定ならば配当の分だけ利益が出る」と説いても、「損をする可能性があるなら、株は買いたくない」という投資家は多い。

そういう投資家が多いために株価が「将来の株価の期待値(プラス配当)より低い値」に放置されており、勇気を持って株を買う投資家にプラスの期待値をもたらしているのである。

■企業はリスクを嫌うから、企業の期待値はプラス
株の長期投資を語る際には、「株主は会社の一部を所有している」という発想も重要である。その前に、オーナー社長の視点で少し考えてみよう。

オーナー社長は、資本金を出資し、銀行から借金をし、労働者を雇い、材料を仕入れて物(財あるいはサービス)を作って売る。売上から仕入れを引いた「付加価値」を労働者に賃金、銀行に金利という形で分配し、残りを自分のものとする。配当するのか内部留保するのかは自由であるが、いずれにしてもオーナー社長の利益となるわけである。

その際、社長は「期待値ゼロ」の投資案件は採用しないはずである。100円儲かるか100円損するかの可能性が五分五分であれば、100円損した時の悲しさの方が100円儲かった時の嬉しさより大きいからである。

1000万円儲かるか損するか、という話になると、会社が倒産して皆が酷い目に遭うリスクも考えなければいけないから、一層慎重になり、期待値ゼロの案件には手を出さないであろう。

これを逆から考えると、会社のビジネスは常に期待値がプラスだ、という事になる。期待値がプラスの案件が無ければ、銀行に借金を返済し、それでも資金が余れば出資者である社長が資金を引き揚げ、受け取った金を銀行に貯金するなり株式に投資するなりするはずである。期待値プラスの案件が見当たらないから期待値ゼロの設備投資を実行する、といった事は起こらないのである。

■株式保有は企業の一部を所有するもの
上記のように、企業のビジネスの期待値がプラスなのだとすれば、株式会社も例外ではないはずである。そして、株主は株式会社の一部を所有しているわけであるから、株主に帰属する利益(配当および内部留保)の期待値もプラスのはずである。

内部留保は、株主資本を充実させるので、PBRが一定だとすれば、株価を上昇させるはずである。

実際にはPBRは一定ではないが、時間分散投資をして長期保有していれば、PBRの変動は均されていくであろうから、PBRが一定であると考えても構わないであろう。

つまり、株式投資も長期で企業経営と同様、リターンの期待値はプラスなのである。

■経済は成長するから
別の説明も可能であろう。世界経済は成長してきたし、今後も成長するだろう。もちろん短期的には不況もあろうし株価の大暴落もあるかも知れないが、世界中の株に分散投資する投資信託を、時間分散で購入し、長期で保有していれば、世界経済の成長の果実の分け前に預かれる可能性は高いと言えよう。

もちろん、新興企業が世界経済の成長を牽引する可能性もあるから、現在上場されている株式の時価総額の増加率が世界経済の成長率よりも低くなることは当然あり得るだろうが、現在上場されている株式の時価総額も、減少していくよりは増加していく可能性の方が高そうだ。

■損得以外にも長期投資はオススメ(余談)
投資を判断する際、期待値だけで判断してはいけないのは当然である。「株式投資はリスクがあるからリターンが高いけれども避けるべきだ」という考え方も当然にあるはずだ。

しかし、筆者が強調しておきたいのは、現金(および銀行預金等々、以下同様)もリスク資産だという事である。インフレが来れば目減りしてしまうのだから、たとえば老後の生活資金として全額を現金預金で持つのは危険である。

そこで、インフレに強い資産である株式との「分散投資」が望ましい、と筆者は考えている。インフレに強く、しかも期待値がプラスである株式長期投資を現金と組み合わせれば、最悪の事態への備えとなろう。

ちなみに、「インフレは過去数十年間も起きていないのだから、今後も起きないだろう」と考えるのは危険である。これから少子高齢化で労働力不足が深刻化していけば、労働力の価格である賃金が上昇し、これがインフレをもたらすかもしれない。

あるいは、南海トラフ大地震が来て大都会が壊滅的な打撃を受ければ、生産能力が激減する一方で巨大な復興需要が生じるため、超インフレが発生するかも知れない。そんな時に世界株に連動する投資信託を持っていれば、ドルも高騰するであろうから、円換算した投資信託の価格は高騰するはずだ。

もちろん、必ずそうなるとは限らないので、あくまでも投資は自己責任でお願いしたいが。

(3月4日発行レポートから転載)

久留米大学教授 TIW客員エコノミスト
塚崎公義『経済を見るポイント』   久留米大学教授 TIW客員エコノミスト
目先の指標データに振り回されずに、冷静に経済事象を見てゆきましょう。経済指標・各種統計を見るポイントから、将来の可能性を考えてゆきます。
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