米『為替報告書』、為替操作国の認定はなし

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米『為替報告書』は、米国の財務省が年に2回、連邦議会に提出する「米国の主要貿易相手国の外国為替政策に関する報告書」のことを指しています。為替介入などによって為替レートを意図的に操作して自国通貨安への誘導を行い、輸出競争力を高めようとする国を牽制することが狙いです。10月17日に公表された最新の報告書は、バランスのとれた内容となり、為替操作国に認定された国・地域は引き続き皆無でした。

【ポイント1】為替操作国と認定された国・地域は前回4月と同じく皆無

中国、日本など5カ国を監視対象国に指定

■報告書によれば、米国の主要貿易相手国・地域のうち、為替操作国と認定するための3つの基準すべてに抵触したところはありませんでした。ただし、2つの基準に抵触した日本、ドイツ、韓国、スイスと、巨額の対米黒字を計上している中国の合計5カ国が、監視対象国に指定されました。今年4月の報告書と比較すると、台湾が監視対象リストから除外されています。

 

【ポイント2】貿易収支、経常収支、為替介入が為替操作国認定の3条件

日本は貿易収支、経常収支基準に抵触

■為替操作国に認定するための3つの基準は、①貿易収支の規模(過去4四半期合計の対米貿易黒字額が最低200億ドル)、②経常収支の規模(過去4四半期合計の経常収支黒字額が対GDP比で最低3%)、③為替介入の有無(為替介入による外貨の買い入れが過去12カ月間合計でGDPの最低2%など)というものです。

■日本は、対米貿易黒字と経常収支の2項目で基準に抵触しました(17年4~6月期までの過去4四半期合計の対米貿易黒字額は690億ドル、経常黒字は対GDP比3.7%)。中国は、基準を超えたのが対米貿易黒字額の1項目のみでしたが、その規模が他の国を圧倒していたため(3,570億ドルの黒字、第2位は日本の690億ドル)、引き続き監視対象リストに載せられました。

 

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【今後の展開】バランスのとれた内容であり、為替市場では材料視されないだろう

■報告書は日本について、緩和的な金融・財政政策に支えられて潜在成長率を上回る成長を続けている今のうちに、内需の持続的な拡大を支え、貿易不均衡の是正に資する抜本的な構造改革を実行するべきと述べています。

■巨額の貿易赤字に苛立ちを強めるトランプ米大統領ですが、今回の『為替報告書』に強硬な姿勢は見られません。北朝鮮問題を巡り中国の協力が必要といった政治的配慮もあったと見られます。いずれにせよ為替市場で材料視されることはなさそうです。

 

 

 

(2017年 10月 19日)

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