業績の上振れが見込まれるアジア・オセアニア株式市場

業績の上振れが見込まれるアジア・オセアニア株式市場

 

○アジア・オセアニア株式市場は企業業績が回復基調を辿る中、堅調さを取り戻しつつあります。
○背景には、増益基調への復調があります。アジア・オセアニア地域の企業業績は、先進国や新興国に比べて回復がやや遅れましたが、2017年1月から予想利益は前年比プラスに転じました。
○豪州、韓国、台湾などでは2桁増益が見込まれており、アジア・オセアニア地域の業績をけん引しています。セクターでは、金融や情報技術がけん引役となっています。
○更に、企業業績は、①中国経済の復調、②半導体需要の世界的な拡大などを背景に上振れが期待できそうです。通貨も安定的に推移しており、アジア・オセアニア株式市場は堅調な展開が予想されます。

 

【ポイント1】堅調さを取り戻しつつあるアジア・オセアニア株式市場

■アジア・オセアニア株式市場(除く日本、ドルベース)は、2016年2月を底に上昇基調に転じました。円ベースでは同年5月にかけて弱含みましたが、同年6月を底に反転しました。当時は、原油価格が50ドル台に復活したことや米国の利上げ観測の後退などが、株価上昇の背景でした。

■2017年に入ってからも総じて堅調に推移しています。トランプ米大統領の保護貿易主義色の強い政策がアジア経済に与える影響が不透明であることなどが懸念材料ですが、世界経済が回復する中、企業業績の改善が株式市場を支えています。

 

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 【ポイント2】企業業績が改善基調20170315as3

豪州、韓国、台湾がけん引

<出遅れていたアジア・オセアニアの業績回復>

■アジア・オセアニア株式市場が堅調に推移する背景として、企業業績の改善が挙げられます。アジア・オセアニアの企業業績は、先進国や新興国と同様に長らく前年同月比でマイナス基調が続いていました。2016年には先進国や新興国の企業業績が同プラスに転換しましたが、アジア・オセアニアが同プラスに転換したのは2017年1月(27カ月ぶり)でした(先進国は2016年10月、新興国は2016年12月にプラス転換)。

<業績回復は豪州、韓国、台湾がけん引>

■アジア・オセアニアの利益成長がプラスに転換してきたのは、豪州、韓国、台湾といった時価総額比率の高い国・地域の企業業績が大きく回復してきたことが背景です。

<中国の回復による一段の業績改善に期待>

■また、中国の企業業績もマイナス幅を縮小してきており、今後はプラスへの転換が期待できます。時価総額が最も大きい中国の企業業績が回復することによって、アジア・オセアニア全体の企業業績ももう一段の改善が予想されます。

<中国企業の業績、半導体需要に注目>

■アジア・オセアニアの企業業績が回復基調を強めている要因として、①アジア主要国による金融緩和や景気対策の効果、②中国のインフラ投資拡大とデフレからの脱却、③原油や鉄鉱石など資源価格の回復、④米国金利の緩やかな上昇、⑤米国トランプ政権による政策期待、⑥半導体需要の高まり、などが考えられます。

■今後は、①中国企業の業績、②半導体の需要増の持続性、がアジア・オセアニア地域の企業業績を考える上での鍵となりそうです。

 

 

【ポイント3】中国の企業業績回復に注目20170315as4

金融、情報技術セクターがけん引

<金融と情報技術セクターのウエイトが高い>

■中国株式の代表的な指数の1つであるMSCI中国は、金融セクターと情報技術セクターの比率が高い株価指数です(*)。中国経済は生産者物価の前年同月比が大きくプラスになるなど、デフレからの脱却が進んでいます。景気回復が期待される中、金融政策も緩和から中立に戻る姿勢がうかがわれます。こうした経済・金融環境の変化を受け、中国の金利は緩やかな上昇が見込まれます。利ザヤの拡大が期待され、金融セクターの業績にとってプラス要因です。

(*)MSCI中国の時価総額に占める比率は金融セクターが26.1%、情報技術セクターが33.0%(2017年3月10日現在)。

<伸びが加速するオンライン売上高>

■また、中国の情報技術セクターはインターネットソフトウエア・サービス部門、いわゆるオンライン販売会社が大きなウエイトを占めているのが特徴です。オンライン売上高は、小売売上高に占めるウエイトも着実に上昇し、今後も成長が期待できる分野です。

■2017年1-2月の小売売上高は前年同期比+9.5%と、2016年12月(同+10.0%)と比べて伸び率がやや縮小しました。2017年1月に減税規模が縮小し、自動車販売が減速したことが背景です。一方、2017年1-2月のオンライン売上高は、同+31.9%と、昨年12月(+同26.2%)を上回りました。小売売上高に占めるオンライン売上高の比率は2017年2月は14.8%とやや低下しているものの、2015年2月の9.9%からは着実に増加しています。

■中国では所得の増加に伴い、消費が増加する傾向にあります。スマートフォンの普及は先進国並みで、オンラインショッピングという新しいカタチの消費が急速に拡大しています。オンライン売上高の増加は、物流センターの整備も加速すると見られ、幅広い分野に影響を与えながら、持続的な成長が期待できそうです。

【ポイント4】半導体サイクルは拡大局面

台湾、韓国企業に追い風

■一方、半導体の需要も世界的に増加する見通しです。これは、循環的に需要が回復することに加え、新たなアプリケーションの成長が期待されていることが背景です。スマートフォンなどの需要に加え、人工知能(AI)など最近は膨大なデータを活用する技術開発が加速し始めており、データセンター向けサーバーなどの需要が増加しています。世界半導体市場統計(WSTS)の予測によれば、2017年の世界の半導体需要は、前年比+6.5%の見通しです。WSTSの予想は、循環的な景気拡大局面では期を追うごとに上方修正される傾向があります。2017年、2018年は景気拡大局面と予想されることから、半導体需要の見通しがもう一段、上方修正される余地がありそうです。

■半導体需要の増加は、台湾、韓国などの半導体メーカーの企業業績には追い風となりそうです。

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【今後の展開】業績の上振れに期待

■世界経済は緩やかに拡大する見込みで、企業のセンチメントの改善が続く見通しです。世界的に金利は上昇する見通しですが、アジア・オセアニア各国・地域は物価上昇率が安定しているため、緩やかな金利上昇にとどまると思われます。通貨も安定的に推移しており、資本流出のリスクは低いと見られます。

■アジア・オセアニア企業の業績は改善傾向が続く見通しですが、今後は、①中国企業の業績上振れ、②半導体サイクルの上方修正、といった可能性が、業績の上振れ期待となりそうです。アジア・オセアニアの株式市場は堅調な展開が予想されます。

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(2017年 3月 15日)

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