経済再開と金融緩和が社債投資の追い風に
経済再開と金融緩和が社債投資の追い風に
1.経済再開により成長率予想は上方修正
2.金融緩和継続の恩恵を受ける先進国社債
3.為替ヘッジコストは低水準
1.経済再開により成長率予想は上方修正
■新型コロナウイルスの感染は世界的に落ち着いてきています。直近では、東南アジアなどの新興国で感染が続いているものの、一時期懸念されたインドなどで新規感染が抑制されてきています。
■米国や欧州ではワクチン接種が進展しており、新型コロナウイルスの新規感染が抑制されています。こうしたことから、経済再開の動きが急速に進んでいます。スマートフォンアプリなどの位置情報から算出された移動指数は春先から回復を続けており、米欧ともにパンデミック前の水準をほぼ取り戻しています。
■経済協力開発機構(OECD)は5月に2021年の世界経済の実質GDP成長率予想を3月の5.6%から5.8%に上方修正しました。米国は6.5%から6.9%、ユーロ圏は3.9%から4.3%にそれぞれ上方修正されており、他地域よりも修正幅が大きめでした。
■こうした経済再開の動きを受けて、企業業績も回復しています。1-3月期決算発表における米国企業の一株当たり利益(S&P500ベース)は前年比+53%、欧州企業の一株当たり利益(Stoxx600ベース)は前年比+95%とそれぞれ大幅増益となっています。
■社債は企業による借金のため、経済再開に伴って景気が拡大し、借り手である企業の利益と手元資金が増大すると、流通価格が上昇する傾向があります。
2.金融緩和継続の恩恵を受ける先進国社債
■経済再開が進む中においても緩和的な金融環境が続くことで、特に先進国の社債市場は安定した動きが続いています。
■先進国の社債価格は、2020年3月に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大直後に大きく下落しました。しかしその後は、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)などの中央銀行が利下げと大規模な量的緩和、社債買入れプログラムを相次いで導入したことで急速に値を戻しました。
■経済再開が順調に進む中でも中央銀行の金融緩和は続いています。FRBのパウエル議長は4月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、「緩和の段階的縮小の議論開始は時期尚早」、「経済は雇用とインフレの目標から程遠い」と述べ、景気の回復が続く中でも金融緩和の縮小に慎重な考えを示しました。
■ECBのラガルド総裁も6月の政策理事会後の記者会見で、「金融政策の移行や出口に関しては一切討議されなかった」と述べ、「債券購入は引き続き年初からの時期よりも著しく速いペースで実施されると予想する」としています。
■大規模な金融緩和を受け、米欧の中央銀行のバランスシートは拡大が続いています。弊社では、米国の量的緩和の縮小は2022年になってからと予想しており、目先は現在の大規模な金融緩和が続くと見ています。
■経済再開と中央銀行による金融政策の追い風を受け、先進国社債は今後も堅調な値動きを続けると見ています。
■足元では特に米国でインフレ率が上昇しているものの、上昇は中古車など一部の項目に集中しています。また、これまで上昇していた宿泊費も上昇ペースが鈍化するなど、経済再開を受けた物価上昇も一服しつつある兆候が見られています。
■こうしたことから、これまで上昇していた米長期金利はこのところ低下に転じています。米国を中心とするインフレ上昇の加速は一時的と考えられ、主要中銀の金融緩和は継続されると見られます。今後も長期金利の上昇は起こったとしても緩やかなものに止まると見られ、社債市場の動揺を招くことにはならないと想定しています。
3.為替ヘッジコストは低水準
■また、欧米の中央銀行の緩和的な金融政策を受け、為替のヘッジコストは低水準となっています。
■日本の投資家にとって、海外資産に投資した際の円高は主要なリスクのひとつとなっています。この為替変動リスクの大部分の抑制を目指す取引が為替ヘッジです。ただ、為替ヘッジには日本と海外の短期金利差や、通貨の需給要因などによりコストが発生します。
■日本では日銀による大規模な金融緩和が長期にわたって続いていることもあり、海外と比べて短期金利が低く、金融緩和が日本ほど大規模でなかった海外通貨のヘッジコストが高い状況が続いていました。
■ただ、2020年3月以降は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて米国、欧州の中央銀行も大規模な金融緩和を行い、相次いで短期金利を引き下げました。その後も依然として金融緩和の縮小には消極的です。こうしたことから、為替ヘッジのコストは現在に至るまで低水準となっています。
■ユーロ円の3カ月の為替ヘッジコストはマイナスとなっており、日本の投資家は為替ヘッジを行うことでコストではなくプレミアムを享受できる状況です。
■ヘッジコストが低下すると、ヘッジコスト考慮後の外国債券の利回りは改善します。これまで、日本の投資家による海外投資の際には、為替ヘッジのコストの高さが課題になっていました。ヘッジコストの低下は日本人の外国債券投資の追い風になるものと思われます。
■財務省によると日本の信託銀行の対外債券投資は2020年後半から加速しています。利回りを求める日本人による外国債券投資は依然として積極的です。また、日本の生命保険会社の運用計画でも、海外社債の投資に積極的な姿勢が示されています。
■外国債券投資の中でも特に社債投資は、経済再開と中央銀行の金融緩和、為替ヘッジコストの低下による恩恵を今後も受けると見ています。
(2021年6月15日)
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