「5中全会」は中国株への長期投資をサポート

「5中全会」は中国株への長期投資をサポート

1.5中全会は5カ年計画に加え、2035年までの長期計画を策定
2.習指導部は一層地盤を強固に
3.成長率の数値目標に言及なし
4.技術開発によって中国は中進国の罠を回避へ

1.5中全会は新たな5カ年計画に加え、2035年までの長期計画を策定

■中国共産党の重要会議である第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が10月26日から29日にかけて開催されました。

■約200人の委員を抱える党最高機関の中央委員会は、全体会議を年1~2回開き、5年に1度開催される共産党大会に代わり、党の重要政策や人事を決定します。5中全会は共産党大会後、5回目の全体会議を指し、5カ年計画などを議論します。全体会議で決めた基本政策は、全国人民代表大会(全人代)で追認する仕組みとなっています。

■会議の閉会後に発表されたコミュニケによると、2021年~2025年の経済政策の基本方針となる「第14次5カ年計画」が策定されました。この中に、米中対立の長期化をにらみ、成長の軸足を外需依存から内需主導型への移行を目指す新政策「双循環」が盛り込まれました。国内経済を輸出依存から転換し、内需を拡大させ、供給側の構造改革を進めるとしています。

■また、2035年の長期目標として1人当たりのGDP(国内総生産)を中程度の先進国の水準に引き上げることや、トップレベルのイノベーション型国家を目指すことが掲げられました。習指導部は建国100周年の2049年に「社会主義現代化強国」を実現するとし、2035年を中間目標の達成年と位置づけています。今回は通常の5カ年計画に加え、長期計画も策定しました。長期計画を策定するのは25年ぶりのことです。

2.習指導部は一層地盤を強固に

■今回の5中全会で2035年までの長期目標を25年ぶりに設定したのは、習近平国家主席が2022年の共産党大会以降も政権を担う意思の表れとみられます。

■2010年の5中全会では、現在の習主席が、中央軍事委員会の副主席に選出され、当時の胡錦涛国家主席を引き継ぐ最高指導者としての地位を固めました。しかし、今回の5中全会では、若手幹部を抜擢する後継者人事はありませんでした。習主席の後継者につながる人事が示されなかったことで、2022年の任期以降も習氏が主席を続投する可能性が強まりました。

■ただ、これは市場の予想通りでした。2018年の憲法改正で2期10年とされていた国家主席の任期が撤廃され、習主席が無期限に国家主席のポストにとどまることが可能になりました。さらに、中国共産党は今年9月、新たな条例で習主席を「核心」とする権威を幹部が守るよう明文化しました。このため、今回、世代交代につながる重要人事は行われないという見方が一般的でした。

■習指導部は5中全会において、今後も米国との激しい対立が見込まれるなか、習氏のトップ続投を念頭に2035年までの長期目標を掲げることで求心力を高め、長期政権に向けた地盤固めを強化したとみられます。

3.成長率の数値目標に言及なし

■中国国営新華社通信は11月3日、5中全会で策定した2035年までの長期目標と2021年~25年の第14次5カ年計画の基本方針の全容を伝えました。

■その中で、習主席は「2035年までにGDPと1人当たりの収入を2倍にすることは完全に可能だ」との見通しを示しました。ただ、経済成長率の目標については、新型コロナウイルスの影響や世界経済の低迷など不確定要素が多いこともあり、具体的な数値目標の言及はありませんでした。

■次期5カ年計画の基本方針では、米中対立の長期化を想定し、ハイテク覇権の争いに向けた産業政策を盛り込みました。「国家の戦略的科学技術力の強化」を掲げ、人工知能(AI)や量子情報、半導体などの分野に重点を置く方針を示しました。また、戦略的な新興産業を発展させる分野として、情報技術や新エネルギー車、航空・宇宙などを挙げました。

■5中全会を受けた数値目標や、より具体的な政策は、2021年3月の全人代で公表される見通しです。新型コロナウイルスや米国との対立という難局が続く中で、外需への依存を薄めて内需を拡大させる「双循環」の具体策や、国内証券の対外開放を含めた開放政策、ハイテク産業の振興策などが注目されます。

4.技術開発によって中国は中進国の罠を回避へ

■なお、2021年~2035年までの15年間で1人当たりGDPを倍増させるには、年平均4.7%の成長が必要です。世界銀行によると2019年の中国の名目GDPは約1万米ドルですので、この倍は2万米ドルです。過去、多くの新興国が1万ドルの壁を突破しきれなかったため、中進国の罠という言葉がありますが、中国はそれに陥ることなく成長を続けることが想定されている事になります。

■一般的に、中進国の罠に陥らずに成長を続けるには、人材の育成と技術進歩によって生産性を高める事が欠かせません。中国は既に種々の計画により、技術開発を積極的に進めており、今後も続くとみられますので、引き続き高めの経済成長が期待できます。

(2020年11月6日)

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