グローバル自動車業界の業績は底打ちへ

グローバル自動車業界の業績は底打ちへ

1.自動車販売は新型コロナウイルス感染拡大による影響で急減
2.自動車業界の4-6月期業績は販売急減により大幅悪化
3.自動車業界の業績は7-9月以降、徐々に改善に向かう見通し

1.自動車販売は新型コロナウイルス感染拡大による影響で急減

■世界の主要な地域では1月以降、新型コロナウイルスの感染拡大によって自動車販売台数が急減しました。感染抑制のため導入されたロックダウン(都市封鎖)によって需要が落ち込んだことに加え、サプライチェーン分断や工場稼働停止による出荷の減少が影響しました。

■新型コロナの感染拡大が最も早かった中国では、1月の販売台数が前年同月比▲21%に減少し、行動制限が本格化した2月には同▲82%まで落ち込みました。中国の次に感染拡大が懸念された欧州でも1、2月に同▲7%程度の減少となったのち、相次ぎ行動制限が発動された3月は同▲55%、4月は同▲76%の減少となりました。米国はやや落ち込み幅が小さいものの、3月が同▲35%、4月が同▲48%減少しました。日本は消費税が引き上げられた昨年10月以降前年比マイナスが続いていましたが、4月に同▲25%、5月に同▲40%と減少幅が拡大しました。その後、各市場とも徐々に改善しつつありますが、日米欧の6月販売は同▲25%前後と依然低水準です。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

2.自動車業界の4-6月期業績は販売急減により大幅悪化

■世界の主要な自動車企業は新型コロナによる販売減少の影響を受け、1-3月期に総じて業績が悪化しましたが、4-6月期は販売台数がさらに落ち込んだことから、減収幅が拡大し、多くの企業で営業赤字となりました。

■この業績悪化を織り込む形で、大半の企業の株価は3月20日前後に年初来安値を付けました。企業によっては年初来▲50%を超える株価下落となりましたが、強固な企業体質を有するトヨタは同▲20%程度、電気自動車(EV)に強いテスラやBYDは▲15%程度の下落に留まりました。

■世界の主要な自動車会社の4-6月期決算を振り返ります。トヨタ自動車の販売台数は日本で前年同期比▲31%、北米で同▲62%、欧州で同▲49%、アジアで同▲56%減少したため、グローバルでは同▲50%減少となりました。販売台数の減少により、売上高は同▲40%減収となり、円高によるマイナス影響も加わったため営業利益は同▲98%の大幅減益となりました。但し、他社が営業赤字に落ち込む中、トヨタ自動車は底入れ時にいち早く販売を増やすことができたことに加え、経費削減に努めたことから、僅かとは言え黒字を確保しました。本田技研工業の四輪販売台数は日本で前年同期比▲30%、北米で同▲68%、欧州で同▲53%、アジアで同▲79%減少したため、グローバルでは同▲63%減少となりました。収益性の高い二輪事業が何とか黒字を確保しましたが、四輪事業の赤字が大きく、全社では▲1,137億円もの営業赤字となりました。日産自動車もグローバル販売台数が前年同期比▲65%減少したため、▲1,539億円の大幅営業赤字となりました。

■米国では、GMとFORDがともにグローバル販売不振によって、売上高が前年同期比▲50%以上の減収となり、大幅な営業赤字を計上しました。一方、テスラは新型コロナの影響による米国工場の一時停止や欧米での販売不振はありましたが、稼働を続けた中国の電気自動車(EV)新工場が生産と販売を支えた結果、売上高は前年同期比▲5%減収に留まり、327百万米ドルの営業黒字を確保しました。

■欧州では、VW(フォルクスワーゲン)の販売台数が前年同期比▲32%減少しました。主力の中国が同1%のプラスとなりましたが、お膝元の西欧が▲54%減少と大きく落ち込みました。この結果、売上高が同▲37%減収となり、大幅な営業赤字を計上しました。ダイムラーやFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)も同様に、大幅減収、営業赤字となりました。

■現代自動車は韓国販売の落ち込みがやや軽く、営業黒字を確保しました。中国系企業の4-6月期決算は8月下旬に発表の予定です。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

3. 自動車業界の業績は7-9月以降、徐々に改善に向かう見通し

■各国・地域が行動制限を徐々に緩和し、経済活動が再開に向かっていることから、足元、グローバル自動車販売は回復傾向にあります。日本の自動車販売台数(登録車)は5月に前年同期比▲40%まで落ち込みましたが、7月は同▲20%まで改善しました。7月の軽自動車販売台数は同▲1%とほぼ前年同月並みに回復しました。7月の米国販売台数は同▲14%減少まで回復し、中国は同9%と3カ月連続の増加となりました。6月の欧州は同▲22%減少でした。

■自動車販売の改善を受け、4-6月期決算時に発表された通期会社計画では、日系大手3社は7-9月以降、業績の改善を見込んでいます。トヨタ自動車はグローバル販売台数を期初見込みの700万台から720万台へ上方修正しましたが、売上高▲20%減収、営業利益▲80%減益の計画を据え置きました。7月-来年3月は売上高▲13%減収、営業利益▲71%減益の見込みです。本田技研工業はグローバル四輪販売台数を前年同期比▲19%減少と見込み、売上高▲14%減収、営業利益▲68%減益を計画しており、7月-来年3月は営業黒字確保を目指します。一方、日産自動車は通期で売上高▲21%減収、営業利益▲470億円の赤字計画となっており、7月-来年3月でも営業赤字から脱却できない見込みです。

■海外企業は通期会社計画数値の具体的な公表がありませんが、予想を見ると日系大手と同様に7-9月以降、販売台数の回復を前提に、業績改善が見込まれています。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

(2020年8月21日)

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