グローバル業績の行方

グローバル業績の行方

1.第2四半期の業績は大幅マイナスだが、上方修正となる見通し
2.2022年にかけて増益基調となろう
3.今後の見通し~株式市場は業績の上振れ期待から堅調に推移しよう

1.第2四半期の業績は大幅マイナスだが、上方修正となる見通し

■米国で4-6月期の決算発表が始まりました。新型コロナウイルスの感染拡大や、ロックダウン(都市封鎖)による移動制限などから、大幅な業績悪化となる見通しです。現在、4-6月期の決算(純利益)を日米欧でみると、米国が前年同期比▲44.3%、ユーロ圏が同▲60.2%、日本が同▲25.9%が予想されています。

■セクター別にみると、ロックダウンの影響から、外出を伴う消費行動が大幅に制約されたことで、「一般消費財」が大幅な減益となる見通しです。また、原油価格の下落を反映して、「エネルギー」も大幅な減益予想となっています。一方、株式市場のけん引役となっている「情報技術」、「ヘルスケア」は相対的に減益率が小さくなっています。

■なお、今年は経済活動が極端な変動に見舞われていることから、ガイダンスを発表する企業が大幅に減少しており、着地を見通すのは極めて困難な状況にあります。このため、現在の4-6月期業績予想はかなり慎重な想定が反映されている可能性があります。

■こうした中、グローバルPMIを見ると、景況感は改善に向かいつつあることがわかります。中国が2月を底に5月に分岐点である50を上回り、回復傾向が鮮明となっています。中国の景況感回復は世界の輸出企業の業績にとってプラス要因です。米国、ユーロ圏、
日本も4月を底に回復傾向にあります。米国を中心に生産や消費にも明るい兆しが見え始めています。したがって、実際の決算は現在の見通しよりも改善している可能性が高いと思われます。

2.2022年にかけて増益基調となろう

■20年7-9月期以降の企業業績は、米国を中心に緩やかな改善が続くと期待されます。ここでは、米欧日の12カ月先予想1株当たり純利益(EPS)を見ました。

■予想EPSは、米国(S&P500種)が回復傾向を鮮明にしています。ユーロ圏(ユーロストックス)は底打ちはしたものの、回復が遅れています。日本(TOPIX)は6月下旬に下げ止まりの兆しを見せていますが、回復基調に向かうにはもう少し時間がかかりそうです。

■こうした回復テンポの違いは、その国・地域の主要産業の活動状況に起因すると思われます。米国の企業業績の回復が鮮明化している背景は、「情報技術」、「ヘルスケア」という主力産業がけん引しているためです。S&P500種に占める両セクターの時価総額ウエイト合計は42%です(7月15日)。ユーロ圏は、消費のウエイトが高いですが、「情報技術」、「ヘルスケア」が先行して回復傾向を示しています。ユーロ圏の年後半の回復が期待されます。一方、日本は「資本財・サービス」のウエイトが高いですが、足元では業績の悪化が続いています。「情報技術」、「ヘルスケア」も米欧とは異なり、底打ちのタイミングが遅行している可能性があります。ただ、世界経済の回復が予想されることから年後半以降の業績好転には期待が持てると考えられます。

■業績の底入れのタイミングは異なるものの、年ベースで2022年までのEPS予想を見ると、20年を底に日本も増益基調が回復すると予想されています。

3. 今後の見通し~株式市場は業績の上振れ期待から堅調な展開が続こう

■グローバル株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大で、金融市場の逼迫と景気後退懸念が起こり、株価が大きく調整しました。その後、緩和政策で金融要因が概ね戻しつつある中、景気・企業業績の改善要因が道半ば、という構図です。

■米国株式市場のここまでの上昇は、金融環境の大幅な改善がその要因の1つと考えられます。実体経済については、悪い数値が出ても金融政策が支えさらに実体経済が改善すればさらに好材料になる、と考えられます。今後発表される企業業績も、事前予想を上回れば、株式市場には大きなプラス要因になると思われます。

■株価上昇に寄与している重要なもう1つの要素が、ウィズコロナで一段と、「情報技術」、「ヘルスケア」の重要性と成長性の高さが再認識された点です。クラウド需要の拡大、ワクチンの開発・実用化など、両セクターの業績見通しには引き続き、期待が集まると思われます。

■最後に、今後を見通す上で、短期的なリスクと中・長期的なポテンシャルを整理したいと思います。

<短期的なリスク>

■新型コロナの感染者数が鈍化しない限り、また、金融緩和基調が終わらない限り、「情報技術」、「ヘルスケア」といったセクター・企業の株価上昇は、バリュエーションに関係なく持続する可能性があります。

■しかし、実体経済の活動再開で、出遅れた景気敏感セクターの評価見直しが進む可能性があります。実体経済の大幅な回復が起これば、セクター間の資金の移動を通じて「情報技術」、「ヘルスケア」等のウィズコロナセクターは短期的に調整を迎えるリスクがあります。

■業績以外では、新型コロナ感染の再拡大と移動制限の発動、米大統領選挙を意識した米トランプ政権の対中戦略の不透明感、などに引き続き注意が必要と思われます。足元では、トランプ大統領の支持率が一段と低下しています。これに呼応して中国への強硬発言が増えています。

<中・長期的なポテンシャル>

■中・長期的には、ウィズコロナは新常態(New Normal)として定着し、ライフスタイルや医療・健康、企業活動を大きく変化させると予想されます。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によってデジタル・トランスフォーメーション(DX*)が、新たな時代をけん引すると考えられるためです。DXはその先頭を「情報技術」、「ヘルスケア」が担うことになりますが、同時に幅広い産業への波及効果も期待され、世界の産業を支えることになると思われます。

(*)DX(デジタル・トランスフォーメーション)。デジタルによる変革。人工知能(AI)やクラウド技術、IoTなどの様々なIT技術を活用し、人々の生活をあらゆる面で変化させることを指します。

(2020年7月16日)

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