運用者の視点:『新型肺炎』の感染拡大による影響

運用者の視点:『新型肺炎』の感染拡大による影響

「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回のテーマは、現在、世界各地に感染が拡大している中国で発生した『新型肺炎』による様々な影響についてです。

【ポイント1】『新型肺炎』感染拡大の現状

■中国の湖北省武漢市で発生した『新型肺炎』の感染が世界各地に拡大しています。WHO(世界保健機関)は、一度は見送った「緊急事態宣言」を発表し、日本政府も中国湖北省に滞在歴のある外国人の入国を禁じるなど各国政府の対応は新たな局面に入っています。中国では武漢市の交通封鎖や春節休暇の延長など感染拡大の阻止に向けた対策を強化中で、あらゆる地域で町から人が消えたとも言われる状況です。鎮静化にはしばらく時間がかかりそうで、危機感を煽るようなメディアの報道姿勢も目立ちますが、少なくとも2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)発生時に比べて、政府の情報公開に対する姿勢が格段と改善していることや、新型コロナウイルスの毒性が比較的低いことなどは、もっと注目するべきかと思います。

【ポイント2】感染拡大阻止への取り組みと働き方の変化

■感染拡大を受けて現地法人スタッフの在宅勤務等、弊社としても少なからず影響を受けてはいますが、業務に支障が出ているかというと必ずしもそうではありません。情報収集や企業分析に基づく意思決定、チーム内での情報共有などは平時と同様に行われ、我々が不自由に感じることはありません。『新型肺炎』の感染拡大を契機に、在宅勤務は「しなければならないもの」として変貌したと言えるのかもしれません。今後は在宅勤務が難しい製造業の現場や対面サービスが必要な仕事も、さらに自動化や無人化が進めば、働き方が大きく変わるのは必至ではないかと思います。

【今後の展開】株式市場への影響と今後の動向

■株式市場の反応は、当然のことながらネガティブです。感染拡大で消費や生産活動が落ち込み、結果として企業業績への打撃が避けられない以上、株式市場がそれを織り込むのはいたって自然な反応です。しかし、投資家としては冷静な視点も必要です。例えば17年前のSARSは絶好の投資機会を提供しました。株式市場は「先行きの不透明感」を嫌いますので、感染の拡大が加速し、どこまで広がるかわからない状況でのトレンド転換は難しいですが、新規発症者数が頭打ちになるなど事態の悪化に歯止めがかかり始めると、先行きの改善を視野に入れた株価形成になっていきます。それまでは、冷静かつ客観的に『新型肺炎』と向き合いつつ、例えば『新型肺炎』の感染拡大で特需が発生する銘柄への投資といった目先のアイデアではなく、構造的な成長ドライバーを抱える優良株の発掘を主眼とした調査活動を継続する方針です。

(2020年2月17日)

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