ドル、円、ユーロの動きについて
市川レポート(No.635)ドル、円、ユーロの動きについて
- 米中閣僚級貿易協議への進展期待からドル高が進行、ドル円は11日に110円の抵抗線を突破。
- 一方、ユーロ圏の景気減速懸念からドイツやフランスの長期金利が低下、ユーロ安・ドル高が進行。
- 足元のドル高には米長期金利上昇という追い風がないため、ドル高の持続性にはやや疑問が残る。
米中閣僚級貿易協議への進展期待からドル高が進行、ドル円は11日に110円の抵抗線を突破
ドル円にとって、1ドル=110円の水準は、1月下旬頃からドル高・円安の方向の強い抵抗線となっていました。こうしたなか、今週に入ると、2月14日、15日に開催される閣僚級の米中貿易協議への進展期待が市場に広がりました。この期待を背景に、2月11日の外国為替市場でドルが対主要通貨でほぼ全面高になると、ドル円は同日、ようやく110円の抵抗線を突破しました(図表1)。
ドル高・円安方向の次の目途は、200日移動平均線が位置する111円30銭近辺と思われます。しかしながら、1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)がハト派的な内容だったため、米長期金利の上昇余地は乏しく、一本調子のドル高は想定しにくいとみています。そのため、一段のドル高には、米国景気の底堅さを裏付ける経済指標や、米中貿易協議が実際に進展して株式市場が安定することなどが必要と考えます。
一方、ユーロ圏の景気減速懸念からドイツやフランスの長期金利が低下、ユーロ安・ドル高が進行
一方、ユーロドルは2月に入り、ユーロ安・ドル高の動きが顕著にみられました。背景には、ユーロ圏の景気減速懸念があると推測されます。実際、欧州連合(EU)の欧州委員会は2月7日、ユーロ圏の実質GDP成長率について、2019年の見通しを前年比+1.9%から+1.3%へ、2020年の見通しを同+1.7%から+1.6%へ、それぞれ下方修正すると、ユーロは対ドルでの下げ幅を拡大しました。
欧州中央銀行(ECB)は、2018年12月末で量的緩和を終了し、金融政策の正常化を進めています。ただ、市場ではユーロ圏の景気減速で、利上げ時期が先送りされるとの見方も出始めており、ドイツやフランスの10年国債利回りは低下傾向が続いています。ユーロドルは、2018年11月12日に1ユーロ=1.1216ドル水準、翌13日に1.1217ドル水準をつけていますが、この辺りは目先のユーロの下値目途として意識されやすいと思われます。
足元のドル高には米長期金利上昇という追い風がないため、ドル高の持続性にはやや疑問が残る
なお、ユーロ圏の潜在成長率は1%台前半と推計されますので、欧州委員会の成長見通し引き下げは潜在成長率程度であり、市場の反応はやや行き過ぎです。弊社はユーロ圏の実質GDP成長率について、2019年は前年比+1.4%、2020年は+1.5%を予想しています。また、弊社では財政支出によって景気が支えられ、12月には政策金利の下限金利(預金ファシリティ金利)が引き上げられるとみており、ユーロ安・ドル高が一方的に進む可能性は低いと考えます。
足元のドル高は、米中協議の進展期待が支えている側面が強く、現状では米長期金利上昇という追い風がないため、「ドル高・円安」、「ユーロ安・ドル高」の持続性にはやや疑問が残ります。ドル円の短期的な動きは、引き続き110円を中心に上下1~2円程度のレンジを見込んでおり、ユーロドルは1.1187ドル水準のチャート・ポイント(図表2)も勘案すれば、1.12ドル前後でユーロ安が一服する公算が大きいと思われます。
(2019年2月13日)
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