18年9月FOMCの結果と市場の解釈
市川レポート(No.566)18年9月FOMCの結果と市場の解釈
- ドットチャートは2020年の利上げ打ち止めを示唆、長期のドット中央値は2.875%から3.00%に。
- 声明で、政策スタンスは緩和的との文言が削除、パウエル議長は従来の利上げペース維持を表明。
- 米長期金利低下、米ドル安、米株安は一時的、市場は足元の米好況と、利上げ継続を重視へ。
ドットチャートは2020年の利上げ打ち止めを示唆、長期のドット中央値は2.875%から3.00%に
9月25日、26日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通り0.25%の利上げが決定されました。なお、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図、「ドットチャート」が示唆する0.25%の年間利上げ回数は、2018年が4回、2019年が3回、2020年が1回となり、前回6月時点でドットチャートが示唆した回数から変化はありませんでした(図表1)。
なお、今回から新たに2021年末の見通しがドットチャートに加わりました。ドットの中央値は2020年と同じ3.375%となり、その結果、2020年での利上げ打ち止めが示された格好になりました。一方、長期(Longer run)のドット中央値は2.875%から3.00%に上昇しましたが、これは9月17日に米連邦準備制度理事会(FRB)副議長に就任したリチャード・クラリダ氏が3.00%予想を提示した可能性が高く、それが影響したものと推測されます。
声明で、政策スタンスは緩和的との文言が削除、パウエル議長は従来の利上げペース維持を表明
FOMC声明では、「金融政策のスタンスは引き続き緩和的であり、それにより、力強い労働市場の状況とインフレ率の2%への持続的な回復を支えていく」との文言が削除されました。FF金利の水準は、継続的な利上げですでに切り上がってきており、市場で削除は大方予想されていました。また、パウエルFRB議長も記者会見でこの削除に関し、政策方針の変更を意図するものではなく、中立水準に近づいている現状を反映しただけと述べました。
また、パウエルFRB議長は、今は米経済にとって非常に良い時期であると指摘し、緩やかなペースで利上げを継続する方針を改めて示しました。今回公表されたFOMCメンバーによる最新の経済見通しでも、2018年と2019年の実質GDP成長率が上方修正されるなどの変更がみられました(図表2)。ただ、新たに加わった2021年の見通しは、実質GDP成長率のペースが長期均衡水準の1.8%に落ち着くというものでした。
米長期金利低下、米ドル安、米株安は一時的、市場は足元の米好況と、利上げ継続を重視へ
FOMCの結果を受けて、米長期金利は低下、ドル円はドル安・円高の反応となりました。これは、ドットチャートに関し、以下の2点が材料視されたことによるものと思われます。1つは、前述の通り、2020年で利上げ打ち止めが示唆されたという点です。もう1つは、2020年末のFF金利水準を3%未満と見込むメンバーが3名だったのに対し、2021年末は5名になり、2021年に利下げを見込むメンバーが増えたという点です。
ただ、市場は足元の米国の好況と緩やかな利上げを重視すると思われ、米国で長期金利低下、ドル安、株安の動きが加速する恐れは小さいとみています。なお、弊社では、米国の利上げについて、年内は12月、来年は3月と6月に行われ、来年6月でいったん終了すると予想しています。ただし、米国の力強い景気拡大がこの先も継続すれば、来年の利上げ回数が3回になる可能性は徐々に高まると考えています。
(2018年9月27日)
市川レポート バックナンバーはこちら
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会